平成幻想録・文

□第12説
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「にしても驚いたなぁ…愛那の家に親戚が住んでたなんて…」

『ごめんね、あの人たちも急に来たんだ』

「だから、あのとき一人暮らしって言ったとき若干苦笑いだったのね」

『え…?』


目を見開きながら彼女を見る。


「気づかなかったとでも?なめないで欲しいな、何年一緒にいるとお持ってんの、全く」

『…ありがとう』


紬に微笑みながらお礼をいうと、彼女は頬を赤く染め、どういたしましてと言った。
彼女達は誰も入ることのできないような絆でできているのだ。

ただ、それが崩れそうになっているのは二人でもわからないことだった…。


コップに入っているジュースを飲んでテーブルに置いた。
すると、部屋の外、つまり廊下からドタドタと足音が聞こえた。
嫌な予感を感じながらその方向を見ているとガチャリとドアは開く。
そこにいたのは白い袴を着た男性、相模だった。


「愛那様!帰ってきていたのですね!おかえりなさい!」

『う、うん…ただいま…てか、入ってくるときはノックする!その前にドタドタとあるかない!』

「す、すみません…」


相模は怒られ、しょぼんとしていた。
犬の耳がはえているならば、垂れていそうだ。
まぁ、彼は狐なのだが。


「愛那、この人は?」

『え、あー…この人は』

「僕は愛那様につかe…んぐ!?」

『こ、この人は、隣の神社の人!何故かなつかれちゃってさ…あははっ』


仕える者。
そう言おうとして愛那に口を塞がれてしまった。
紬がそんなことを知れば不思議がるに違いない。
彼女は愛那のことをよく分かっているから、どんなことがあろうと愛那が傷つくことは許さないのだ。


「愛那が神社の人達と知り合いなのは知ってたけどここまですごいとは思わなかった」

「んぐ、」

『あ、はは…』


紬は疑いもせず、納得してしまった。
しかし、内心では疑っていた。
愛那がなにかを隠しているのは分かっていたのだった。


「ま、愛那様!苦しいです!」

『あ、ごめん』

「仲、いいんだね」

『え…』

「そう見えますか!?」


紬は相模の勢いに圧倒されつつも頷いた。
彼は嬉そうにニコニコしていた。


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