平成幻想録・文

□第12説
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街中で歩いているとビルのスクリーンに今人気絶頂中の彼が新しいシャンプーの宣伝をしていた。


『騰蛇…』

「あ、ほんとだ!カッコイイよね!」

『え、あ、うん』


友人の言葉に苦笑いする愛那。
アイスを食べてはぐらかす。
しかし目線は彼のまま。


「あ、ねぇ!今から愛那の家に行ってもいい!?」

『え!?い、今から!?』

「うん。だめなの?」

『あー…いや、その、うん』

「あ、掃除してないとか?大丈夫、気にしないから。てか愛那ん家綺麗じゃん!」

『そんなことないよ…』


久しぶりに愛那の家に行きたいと言い出した友人。
以前なら喜んでOKしていたかもしれない。
しかし、今は彼らがいるのだ。
そんな中自分の家に呼べない、そう思っていたのだ。
それに、自分が陰陽師とわかった今、何が起きるか分からない。
しかし友人の眼はきらきらしている。


『しょうがないな…わかった。行こっか』

「本当!?やったー!」


目の前で喜ぶ姿を見て微笑む愛那。
途中でお菓子などを買い家に帰る。
その道中で彼らが神社に出かけていることを祈りながら。


『ただいま…』

「おじゃましまぁす!」

「おかえり。ん、その子は…」


その祈りもむなしく、彼は家にいたのだった。
玄武も友人も目をぱちくりとさせ、愛那は片手で頭を押さえていた。


「え、愛那、この人だれ?」

『あ、いや、その…』

「愛那の友達か?」

『あ、うん…』


歯切れわるく答える姿に玄武は何となく察した。


「俺は玄武。愛那の親戚だ。いつも愛那は世話になってるな」

「え、あ、いや、私のほうこそ…私は靱屋紬です。よろしくお願いします」

「あぁ。」


玄武の対応に驚きながらも、小さく笑っていたのだった。



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