平成幻想録・文
□第11説
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『ただいまー』
そんなことを言うのは彼らがいるから。
家の中へ入り、靴を脱ぐ。
「愛那様!おかえりなさい!」
『ただい…え?』
まさかの人物が愛那を出迎えたものだから彼女は驚いて鞄を落としてしまった。
「愛那様?」
『なんで、相模がいるの…?』
「今日から僕も愛那様をお側でお守りしたいと思いまして!」
『あ、そう……』
頭を抱えたくなった。
また、居候が増えるのかと。
しかし、彼はここにいてもいいのだろうか。
神社に支える身で、あるというのに、
「言ったでしょう?僕は元々野狐なんです。仕えていると言っても正式なものではないし、僕は貴女を守るために存在しているのですから」
『そ、そうなんだ…』
「ちょっと待て。愛那を守るのは俺達だ。お前は大人しく神社に居座ってな」
リビングから彼の言葉を否定するような形で青龍はやってきた。
「青龍様、お言葉ですが僕は彼女にこの命を救われました。恩返しをするためだけに、生きてきたのです。彼女を守りたい、それだけのために…。その気持ちを邪魔する権利は貴方にはありませんよ」
相模に笑顔でそう言われ、言葉につまりが出る青龍。
もう、なんでもいいよと思いながら彼らを置いてリビングに行く。
「おかえり、愛那」
「おかえりー!」
「…おかえり…」
『ただいま』
このやりとりをするのももう日課になっている。
最所の頃はむずかゆかったが、今ではそれが愛那の日常になっている。
廊下で喧嘩(?)をしていた青龍と相模はあわててリビングへ入ってきた。
二人きりにするなと言葉を合わせながら。
お互いに固まり真似するな!とそれも言葉を合わせて言った。
愛那はクスクスと笑いだし、朱雀もお腹を抱えて笑っている。
玄武や白虎は顔には出していないが、笑っている。
「ま、愛那様、笑わないでください…」
『だって…』
目尻に涙を溜めている。
それを拭いながら相模をみれば、彼はむすっとした表情をしていた。
年齢的にも自分よりはるかに上なのに、そういう表情はとても子供っぽくて。
なんだか、愛らしかった。
「相模だけずりーよ!俺も構えよ!」
『ちょ、青龍うっとしい!』
「なっ…!」
愛那に除け者にされ、青龍は固まってしまった。
そして、方針状態になりながら部屋の隅の方へ行き体育座りをしてのの字を書き始めた。
『女々しいっ!』
「だって、愛那が構ってくんねぇんだもん」
『もん、って…』
いまだにしょぼんとしている青龍を見て溜め息をつくと彼の髪を引っ張り、程ほどなら、と一言言った。