平成幻想録・文

□第10説
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先程までのピリピリとした空気とは一変して和やかな空気になる。

やはり彼らはこうでなくては。

笑いながらそう思った愛那だった。



足の痺れも抜けてきたところで、今度こそ帰ろうかと立ち上がろうとした。
今まで自分は畳の上にいたはずだ。

しかし足元を見れば赤く染まってるではないか。

まさかと思い、目の前を見てみると…


『貴人さぁぁぁぉぁぁぁぁぁあん!?』

「…ゲフッ」

『ちょっ、大丈夫!?』

「ホント心配性だよな、愛那は」

「大丈夫よ。少し無理しすぎただけだから。寝てれば治るわ」


足元の赤いものは貴人が吐血をしたあとだった。
今までもよくあるほど日常になっている彼女の吐血。
十二天将達は見慣れているから微動だにしないが、愛那は数回しか見ておらずあたふたしている。


貴人は体は弱いがこれでも一番強いのだ。
皆のリーダー的存在である。
見ていれば分かることだが。


「貴人は相変わらずだな」

「ホントだな!」

「確かに」

「…うん…」


四神たちは口々にいう。
その顔はどことなく嬉しそうだった。
皆なんだかんだ言ってお互いがお互いを信頼しているのだ。


『畳が血だらけ…』

「まぁ、そこは太裳が何とかしてくれるさ」

「ちょっと待ってください。いくらなんでも俺は無理です」

「お前ならできるだろう。じゃぁ、あと頼んだぞ、太裳」

「え、ちょ、天空!?」


天空は逃げるように自分の部屋へ戻っていった。
クスクスと笑いながら大陰もではといって彼のあとについていった。


「何で俺がこんなことをしてなくては…」

『あの、手伝いますか?』

「いえ、大丈夫です。」


そう言った太裳は目を瞑り血だらけの畳へ手をかざした。
すると、かざした場所が光りその光が消えたと思ったら畳はきれいになっていたのだ。

愛那は目を丸くした。
今の状況に頭がついていけていなかった。


『え、なに、今の…』

「あまり貴女にはお見せしない方がいいと思っていたのですが…これは刻戻しと言ってその物の一時間以内ならば刻戻せるのです。ただ、人には、使えませんが…」


人に使うことはタブーとしていた。
ならば、相模はどのようにしてあの傷を治したのだろうか。
あれは少なくとも一日で治るようなものではなかったはずだ。


「僕は元々野狐です。治りもそこらのひとよりは早いんです。」


怪我をしていた所を触りながらそう答えた。
彼の表情は微笑んでいたが悲しそうにも見えた。
何故だか分からないが…



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