平成幻想録・文
□第10説
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陰陽師。
それは悪霊を封印したり、それにとりつかれた人を助けるために祓ったりする人のことを言う。
そして愛那はかの安倍晴明の子孫。
そう言われた。
あの日の夜、愛那は頭の中で何かが弾かれたような感覚に陥っていた。
あれは一体なんだったのか…
それを聞こうと口を開こうとしたら、貴人は読心術でも取得しているのか先に言われてしまった。
「本当は…20歳になってからだったのです。貴女が陰陽師として生活をするのは。しかし、思ったより怨霊達はちからをつけてしまっていたらしく、私達だけでは押さえきれなくなってしまい、このような状態になってしまったのです。」
『それと、私の…その、』
「頭の中で弾かれたようなものは私が貴女にしていた封印です。貴女には力があります。なので私たちの事何かが違う、そう感じましたでしょう?力があるとわかればたくさんの怨霊達が貴女を襲ってくる…なので、力を封印していたのです」
『ふう、いん…』
勝手な事をしてごめんなさい、しかし…
と貴人は続けた。
「そうしなければ、貴女を守れなかったのです。精神がある程度出来ていなければ、それこそ命取りになります。貴女を死なせるわけにはいかないのです……」
貴女のためにも、そして、私たちのためにも…
愛那は黙ってそれを聞いていた。
いや、口に出す言葉が出てこなかったのだ。
『…そう、なんだ…』
聞けば玄武達四神も彼女を守るために動物化していたらしい。
玄武を貰ったときも大陰からだった。
しかしそこで、ふと思い出す。
青龍が来たのは父が釣ってきた時だ。
それに愛那が子孫だと言うのなら彼女の父も…
はっとして貴人を見れば愛那の言いたいことが分かったのか頷いていた。
「拓哉さんも、そうです。しかし、貴女は彼以上の力を受け継いでいます」
『え?』
何百年かに一回はあるらしい。
子孫の中にかなりの力を受け継ぐ者がいることが。
それが、愛那なのだ。
『そうなんだ…』
「…愛那s『言ったでしょう?私は受け入れるって。それに、あなた達との壁がなくなった気がするの』!」
『私普通に貴方達と接してたけど、何かが違うなって…思ってたの』
彼女は鋭いんだ…
そこにいた誰もが思った。
周りを見ているというか、敏感なのか…
どちらにしよ、彼女には素質があるのだ。
『私、頑張るよ…怨霊だかなんだか知らないけど、今の生活を乱されるなら私は…それを守るだけ』
「それでこそ、我が主です」
貴人は愛那に対して嬉しそうに微笑んでいた。
他のみんなもそうだ。
『よし!疑問とかなくなったところで帰りますか!』
そう言って立ち上がろうとした時だった。
足が痺れて立てなかったのだ。
『こ、こんな長時間、正座何てしないから、足が…』
「く、くくくっ」
「騰蛇!お前なんてことを!」
「だ、だってよ…ふっくくっ」
耐えられなかったのか、騰蛇はお腹を抱えて爆笑している。
隣に座っていた六合は彼に対して怒っているが、少なからず笑いをこらえているよだ。
『み、皆してひどい…』
「まぁまぁ、大丈夫ですか?」
『大丈夫、だと思う…』
痺れた足を擦りながら太裳の問いに答える。
それほど緊張もしていたし、その場の空気が張り詰めていたのだろう。
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