平成幻想録・文

□第9説
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しかし一体なんの用なのだろうか。
それを、聞こうとすれば考えていることがわかったのか先に言われてしまった。


「愛那様、並びに四神の皆様、貴人様がお呼びでございます」

「「「「!」」」」

『?』


相模の発言に彼らは肩をびくつかせ、愛那も少なからず不思議に思っていた。

心のどこかでモヤモヤしてるのを気づかないふりをして神社へ足をはこんだ。

向かった場所は貴人の部屋ではなく、いつも皆がいる居間。
そこには太裳や天空をはじめ、全員が揃っていた。


「いらっしゃい、愛那さん、玄武、青龍、朱雀、白虎」

『あ、うん、あ、あのっ!』

「まぁまぁ、お茶でも飲みましょう?」

彼女が何故玄武たちのことを知っているのか、それを口に出そうとすれば貴人からお茶を渡され、彼女は納得のいかないままそれを飲んだ。

コトッと湯飲みを置いた貴人は先程までの笑みを無くし真剣な顔で愛那を見ていた。


「まず、昨日のことですが…」

『!?な、なんで知って…』

「それは…見ていましたから」


愛那は以前から貴人のことを不思議には思っていた。
しかしこのときばかりは彼女に恐怖を抱いた。


「…昨日のあれは、この地に怨念を残しさまよう怨霊です。」

『おん、りょう…』


そんなことを言われて放心状態になる愛那。
しかし、そんなことをお構いなしに話を続けていく。


「今までは私たちが押さえていましたが何者かの力によってそれが破られてしまい、あのように暴れだしてしまったのです」

『あなたたちは、何者、なの…?』


貴人の言っていることが人間離れしていて、愛那は途切れ途切れに今まで聞けなかったことを今口にした。


「ここにいる私たち、愛那さんと相模以外はかの有名な陰陽師、安倍晴明様に仕えていた者、十二天将と呼ばれるものです」

『何…それ…』


安倍晴明…
それは平安の世に数々の名を残した人物。
陰陽師として、怨霊や悪霊を封印してきた。

愛那にとって彼の情報はそれくらいしかなかった。
だから十二天将なんてもの聞いたことなければ、何故そんな人達が今自分の目の前に存在してるのか。
それらが全く分からなかった。


「晴明様が亡くなった後も…沢山の後継者たちにお仕えしてきました。それは、今も同じ」

『…私の、私の家は、普通の家だよ。そんな、陰陽師とか、言われても分からないよ…』


か細い声で、愛那はそう、口にする。
貴人の後ろにいる勾陣や天后達も幼い頃から彼女のことを見てきていつかはこんな日が来るとは思っていた。
辛い日々になろうとも。
しかし、可愛がってきた愛那が辛い思いをするのは皆、してほしくないと思っているのだ。



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