平成幻想録・文

□第8説
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「彼女に近づくな」

『っ!!』


その瞬間、時間が止まったような気がした。
自分の心臓の音だけが鮮明に聞こえてくる。

このぬくもり、そして声、すべてが安心させる。
振り向きたいが、それはしてはいけない、そう感じた。


「キサマ…ナニモノダ…」

「それをお前に言う必要はない」


彼から殺気が出ているのがひしひしと伝わってくる。
しかし恐ろしさは自然と感じなかった。
怨霊は彼を睨んでいる。


「ソノキ…マサカ…」

「クス、分かってしまったか。これでわかっただろう、お前は僕には勝てない」


勝てるはずもない…そうつぶやいて武器を出そうとした。
その時後ろの茂みの方から声がした。この声も愛那は知っている。


「愛那!大丈夫か!」

『げ、玄武…皆も…』

「なんだよ…これ」

「怨霊、か…」

「……」

「すみません、愛那様をよろしくお願いします」

『さ、相模っ』


相模は愛那を玄武に預けると、怨霊と戦おうとしていた。
しかしそれを止めようとしたのか彼の服を掴む愛那。
困った顔をして彼女の頭を撫でると、奴に向かっていった。


『…め……』

「愛那?」

『駄目…相模が…死んじゃう…』

「!…お前もしかして…」


玄武は愛那の言葉に目を見開いた。
彼女の体はどんどん震えてき、たっていられるような状態ではなかった。
玄武が愛那の体を支えているが、止めようと相模のところへ行こうとする。


「ちょ、待てよ、お前が行ったところでやられるだけだって!」


それはもっともだと俯いてしまう。
前では相模と怨霊が戦っている。
相模が押してるようにも見えるが、少し辛そうにも見える。



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