平成幻想録・文
□第5説
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愛那が来ても一向に喧嘩をやめない騰蛇と六合。
そんな二人にキレをなし勾陣が怒鳴ろうとした。
そのとき、襖がバンッと開いた。
何事かと思えば、そこにいたのは白髪で、少し厳つい顔をしたおじいさんだった。
彼らはおじいさんを見ると顔を青ざめ固まった。
「お前ら、いい加減にせんかぁぁぁぁぁぁあっ」
おじいさんはワナワナと震えだし、愛那達に向かって怒鳴った。
まぁ、愛那は巻き込まれただけなのだが。
日常茶飯事なのか愛那と勾陣と天后、そして大裳は耳を塞いでいた。
「まぁまぁ、天空。落ち着いてください」
「大陰…今日という今日は我慢ならん!」
「でもせっかく愛那ちゃんが来てくれたんですから」
大陰にそう言われ、はじめて愛那が来ていたことに気づいた天空。
目が合うとお辞儀をする愛那。
天空は咳払いをして部屋を出ていった。
その際にみっともないところを見せるなと一言残して。
天空は厳しいところをあるが、何だかんだで優しく愛那にはとても甘い。
大陰は苦笑いしながら彼女にゆっくりしていってねと言い天空のもとへ行った。
『相変わらずだね、ホントに』
「天空を怒らせるといいことねぇぜ、ったく」
「お前達が悪いんだろう?少しは反省しろ!」
「何で俺が!?コイツだろ!?」
「僕はわるくないが。お前が先に突っ掛かってきたんだろう?」
「どっちもどっちよ、全く…」
「そろそろ自覚をしてください」
彼らのやりとりについ、笑いがこぼれる。
彼らは目を見開き愛那を見る。
その視線に気づき楽しくてと、そう言う。
最近なかなか神社に来ることができず、彼らはの喧嘩にまきこまれなくてすむと少しは思っていた部分があった。
しかしやはり彼らと一緒にいるのは楽しくて。
それが自分の生活の一部なんだ、と改めて思った。
「んだよ、俺らが喧嘩してるのがそんなに面白いかよ」
「そうじゃなくて。やっぱり、みんなといるのは楽しいのよ」
笑顔でそう言われ、騰蛇は嬉しそうに愛那の頭をわしゃわしゃと撫でた。
髪の毛が乱れてしまい、騰蛇を睨むがそんなことは気にせず、近くにある座布団に座った。
「貴方も少しは働いてください」
「いいだろ、俺は外で仕事してんだから」
「モデルだっけ?いいわよね、いろんな服を着れるんだもの」
騰蛇は女性受けのいいその容姿を生かしてモデルをしている。
元々はそんなものに全く興味がなかったがスカウトされ今日(こんにち)まで続けている。
何故続けているのか聞いたことがあるが、そのときははぐらかされてしまった。
なにか訳でもあるらしいがそれ以上聞けなかった。
「だったらお前もやればいいじゃねぇか?」
「そんな簡単に出来るもんじゃないわよ」
天后は呆れぎみに騰蛇にいうが全くわかっていなかった。
彼はそう言うことにかんしてバカなのかもしれない。
「そういえばこの前拓哉さん帰ってきたみたいですね」
『うん。まぁすぐに仕事に行っちゃったんだけどね』
拓哉とはまなの父親のこと。
神社に住んでいる人は皆彼の事を知っている。
もちろん拓哉も彼らはを知っている。
夏休み中は帰ってきていることが多く、バーベキューなんかをよくしている。
今年も出来たらいいなと縁側に座りながらそんなことを思っていたのだった。
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