平成幻想録・文

□第4説
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『かわいいっ!!』


狐が可愛くて仕方なく、その日はずっと膝に乗せていた。
狐もまんざらではないらしく、うれしそうに尻尾を振っていた。


『じゃぁ私はそろそろ帰るね!さがみーもまたね!』

「ええ。あぁ、あと彼らも会いたがってたわよ」

『また今度くるって言っておいて!』


おばあちゃんとさがみーに手を振ってこの日は帰っていった。
そしていつのまにかおばあちゃんの隣にはさがみーではなく、一人の男の人が立っていた。
彼には狐の耳、六本の尻尾が生えていた。


「彼女の事、ちゃんと守って上げてね」

「わかってますよ。彼女は俺の恩人ですからね」


彼は愛那が歩いて行った道をジッと見ながら真剣な顔をしていた。


そして次の日のことだった。
愛那はいつものように学校から帰るため歩道を歩いていた。
交差点入ろうとしたその時、横からかなりのスピードで走ってくる車にぶつかりそうになったのだ。


「あぶないっ!」

『きゃっ!』


そこを男性が助けてくれた。
驚きで思考が回らなくて心臓がバクバクしている。
男性は愛那を掴んでいる手をゆっくりと話した。


「大丈夫ですか?」

『あ…はい…』

「気をつけてくださいね。あぶないですから」

『あの、ありがとうございます』

「クス、どういたしまして。怪我はありませんか?」



目の前に男性はたぶん細目なのだろう。端から見れば見えないのかと思う。
それに加え、イケメン。そんな人に助けられてはたまったもんじゃないだろう。
現に私も顔を赤くしている。
彼らもかっこいいとは思うがこれは部類が違う。


「どうか、しました?あ、もしかして怪我を?それは大変だ」


彼は先程とは一変して顔を青ざめた。
え、っと思っていると急に目線が高くなった。
一瞬のことですぐにはそれがどういうことかわからなかったが、私は今彼にお姫様抱っこというものをされている。


『あ、あの!?』

「どうしました?」

『どうしました、じゃなくて!!どどこに行くんですか!?てかおろしてください!』

「それはいけません。どこか怪我しているかもしれませんから」

『あなたに助けていただいたので怪我はありません!大丈夫です!』


だからおろして…というも聞いてくれず、そのまま移動は続いた。



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