平成幻想録・文

□第2説
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「……那、愛那!」

『……ん…?』


誰かに起こされている。
父はまだ帰ってきていない。
いや、帰ってきていたとしても私を起こしにくることはない。
まぁ、そのため、ここには私しかいないはず…

そう思いながら目を開けると、そこにはマッチョが私を見ていた。
驚きで悲鳴をあげてしまった。
その声に反応して外の、木に止まっていた鳥達が一斉に羽ばたいていく。


『あ…あんた、何して…っ』

「何って、お前を起こそうとしたんだが…」

『そ、そんなことしなくても…っ』


愛那は布団のシーツで自分を隠しながらワナワナしていた。
夜はキャミソールに短パンをはいているので人見せできないような格好なのだ。


『とりあえず、でてけ!』


いきなり部屋を追い出された玄武は訳がわからず頭をかしげていた。
今のことで完全に目が覚めた愛那。
頭を整理し昨日のことを思い出していた。


『(そうだった…昨日…)』


ふぅ…と溜息をついて、ベッドから降り、制服へ着替え始める。
学校へ行くための、支度が終わったところでリビングへ行こうとドアを開けた。
普通目の前は壁なはずだ。
彼女の家の壁の色は白なのだが、今の色は黒いのだ。
これはどう見てもおかしい。
顔を上げるとそこにはマッチョが立っていたのだ。
愛那は固まっていたが彼は笑顔でこちらを見ている。


『何やってんの?』

「お前を待っていたんだ」

『ハァ、待ってなくていいよ、つか待つな!』

「何故だ?」


彼女が言っていることの意味が分からず聞いてくる。
彼のような性格はよく言えば純粋、悪く言えば常識知らずといえる。

これ以上は何をいっても無駄だと思い、リビングへ行くことにした。
階段を下りているときから思っていたがとてもいい匂いがしていた。
これはご飯の匂いだろうと、思いながら入ると果たして自分家の冷蔵庫の中身で作られたものなのか、と疑うような品がテーブルに並べられていた。


『あんたホント何者だよ…』

「?俺は俺だが?」

『あぁ、もういいよ、うん』


彼の天然ぶりを見ながらご飯を食べ終えて、時間もおしてきたので家を出て学校へ行くことにした。
その際その姿で家を出るなを念と押して。



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