平成幻想録・文

□第1説
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長かった梅雨もようやく明け、猛暑の季節と変わり、肌に汗がながれてくる。
制服も肘くらいまでまくり、鞄からタオルを出し、それをふく。


今は授業中であり、前では教師が説明をしており真面目に聞いている生徒もいれば机に伏している生徒もいる。
私はその前者だ。
しかし、時に教師の話が頭に入らずほかのことを考えてしまうことがある。
今がそんなときである。

私の家は代々普通だ。
……たぶん。

ただ、家のとなりに大きな神社がある。
その神社に住んでいる人にはずいぶんお世話になっている。
母が幼い頃に亡くなり、父も仕事で海外へ行くことも多く、私はよくそこに預けられた。
そのため今でも、ちょくちょく遊びに行っている。


『…(家に帰ったら亀にえさあげなきゃ)』


私が飼っている亀、それは神社に住んでいるお婆ちゃんにもらったもの。
大切に育ててね、と言われてからというものその亀は甲羅が黒く、尻尾も長い。
貰った当初は変なものをもらったと思っていたが、今では可愛がっている。
そんなことばかりしていたため他の生き物や植物を育てるのが好きになっていた。


「…那……愛那!」

『……!何?』

「何、じゃないよ!授業もうすぐ終わるよ」

『あぁ、うん。ありがとう』


私の友人は本当に気が利く。
私はあまり友達と遊んだりしないのだが彼女だけは私のことをよく理解してくれて今まで付き合ってこれている。

考えことをしている間に午後の授業は終わってしまった。
SHRもおわり、やっと放課後になった。
幸い今月は掃除はない。
そのため、早く帰れる。
因みに、部活は家庭部。
週二の活動で今日はない。


「じゃ、愛那、バイバイ!」

『うん、またあした!』

友人は部活があるため教室を出て行った。
教室に生徒も少なくなってきたところで、自分も帰ろうを思い、教室をでる。
学校を出ると日差しが強く照っていて、汗で染み込んだ制服が肌について気持ちが悪い。
早く帰ろうと少々早歩きで歩く。

ようやく自分の家に着いた。
それなりに大きい家なのだが今は父が仕事で家を空けているため実質ひとり暮らしといっても過言ではない。
まぁ、おかえりがないのは少々寂しいが。
だが仕方ない。
父は私のために働いているのだから。


「あ、おかえり。愛那」

『……』


ドアを開けて入ろうとするとそこにはピチッとした黒い服を身につつみ、
エプロンをつけてこちらを見てニコニコしているマッチョがいた。

愛那は固まった。
当たり前だろう。ひとり暮らしをしているはずの彼女の家に人がいるのだから。
そもそも、何故目の前のマッチョは私の名を知っているのか。

その前に、まず気にしなければならいのは何故マッチョが家にいるのかだ。
彼女の知り合いにマッチョは存在しない

私は疲れているのかもしれない……

そう思っていながらドアを閉めた。
私はマッチョが近づいてくる前にドアを閉めた。
そしてUターンして一度離れようとした。
するとそのドアはひたらいた。



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