人が増えたと思ったら今度は人が降ってきた!?・文
□第12説
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雲ひとつ無い晴天に見舞われ、絶好の文化祭日和になった。
愛那は準備があるからと、朝早く家を出ていき、玄武に後を頼んだ。
彼らも時間になれば、文化祭にいくことになっていた。
「愛那はどんな服着るんだろうな!」
「…カメラ、持ってかなきゃ…」
「良からぬ者が寄り付かないように見張ってないとな」
「それに関しては任せろ!」
「僕も手伝いますよ」
玄武達の会話を聞いていた他の者達は彼らの保護者っぷりに言葉を失っていた。
「愛那ちゃんが聞いたら呆れそう…」
誰ががボソッと苦笑いしながら呟く。
それに反応し、他の者も頷く。
そんなに気合いをいれて文化祭に行ったところで愛那に追い出されるのは目に見えている。
彼らを文化祭に招待したのは間違いだったと後悔することになるとは思いもしなかったのだ。
愛那の学校へ着くとそこは多くの人で賑わい、とても楽しそうだった。
そのなかで注目を浴びている彼ら。
特に…アレルやエルネットだ。
彼ら以外も男女共に視線を浴びている。
とはいえ当人達は何故視線を浴びているのか分かっていないのだが。
「ねーねー!今ね!スッゴいイケメンが外あるってたの!」
「あ、見た!なんかマッチョもいたよね!?あのほどよい上腕二頭筋が…素敵だった…♡」
「あんたマッチョ好きだもんねぇ」
クラスの女子達のそんな会話が偶然耳に入ってしまい固まってしまう。
ただのイケメンならどうでもいいんだ。
しかしそこにマッチョというキーワードがあり、愛那はそこに反応してしまったのだ。
もしかして…と思っていると廊下が女子達の黄色い声で溢れかえっていた。
「あ!愛那ぁ!」
「愛那じゃん!よかった、見つかって!」
『う、うん(周りの視線が怖いよぉぉぉぉお!)』
騒ぎの原因に声をかけられ、主に女子生徒からの視線がチクチクと作ったって刺さる。
こんなときに限って自分の親友の持ち場が別で、その事を恨んだ。
『と、取り合えず中に入りな…よ』
苦笑いしながら促すと彼女は信じられなものを目にした。
それはエルネットが男子生徒に声をかけられているものだった。
普通に声をかられているだけならまだいいのだ。
その後が問題だった。
「ふふ、ありがと♪」
「い、いえ…!!」
「「「!?」」
エルネットはその男子生徒にキスをしたのだ。
それにより男子生徒は顔を真っ赤にして倒れてしまった。
「あらあら、初なのねぇ」
悪びれる様子もなく、頬に手を当ててクスクスと笑っていた。
「ちょ、エルネット!?何やってんのさ!」
「何って…」
見たらわかるでしょ?という顔で見てくるのに対し、呆れた顔で溜め息をつくのだった。
「うわぁ、あいつかわいそうに…オカマにキスされるなんてよ」
まるでこの世のものとは思えないような目で見ていた。
それを彼が聞きのがすわけもなく、ギロりと青龍を睨んでいた。
やっと愛那の教室に入ってくれたはいいが、教室の中も廊下も見渡す限り人、人、人。
原因は彼らなのだが。
気にするわけもなくメニューを注文していた。
「あ、あのっ!」
「ん?なんだ?」
「なんでマフラーしてるんですか?ここは室内だし、それにまだマフラーを巻くような気温じゃ…」
ある生徒が十六夜に声をかけその疑問を問うと、彼はそれはもう愛しい目でマフラーを見ていた。
それは見惚れるほどで。
「…昔、大切なやつからもらったのだ」
「…そうなんですか!」
その話を聞いていた秋乃は何故かモヤモヤしていた。
きっと彼の、あの表情を見てしまったからだ。
やり場のない気持ちをどうしたらいいのかわからず俯いていると、十六夜が心配してきた。
「うるさい、黙れ」
「秋乃ぉ!」
「近寄るな!」
その遠くから見ていた愛那はクスッと笑っていた。
彼女の友人もどことなく察しているようで温かい目で見守っていた。
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