平成幻想録・文
□第4説
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これは誘拐なのでは…?と思うがこの人に危険な気がしない。
どこに連れて行かれるのかと思っていると着いたと言われ、顔を上げるとそこには自分がよく知っている場所だった。
『ここは…何で…』
「ここは僕の家でもありますから」
『え?』
「おや、相模に愛那ちゃんじゃない。どうしたの?」
「あ、大陰さん。さっき車に轢かれそうになっていたので助けてそのまま連れてきたんです」
「まぁ、大丈夫なの?」
『あ、はい。私の不注意だったので…』
もう何がなんだか理解ができていない愛那。
自分がよく通っている神社おばあちゃんと自分を助けてくれた男性が親しく話しているのをただボーッと見ていた。
いまの彼女にはそれしかできなかったのだ。
『あの、おばあちゃん…』
「ん?どうしたの?」
『いや、あの…この人誰ですか?この家に住んでいるみたいだけですけど…』
「フフ、あなたはもう会っているはずよ。と言っても人間の姿ではないけれどね」
彼女のいい方が気になる。
愛那を彼は会っているけどそれは人間の姿ではない。
とすると、とても嫌な予感がしてくる。
玄武たちと同じとすればもしかすると彼は…
『さがみー…なの?』
「はい。気づいてくれたんですね」
『あ、いや…人間の姿であったことあるの、あの狐しかいなかったから…』
うれしそうに微笑む彼を見て、顔を赤らめてうつむく。
こういった耐性がないので困る。
大陰はそれに気づいているらしく、二人は見ながら微笑んでいた。
『あ、み、皆は?』
この空気に耐えられるはずもなく、そうきくと今日も皆出払っているらしく、いないそうだ。
「僕だけじゃ、ダメですか?」
『そ、そうじゃなくて…!』
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