love**
□愛のモノサシ
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愛の重さが
愛の尊さが
愛の深さが
愛の全てが測れるモノサシがあるなら世界中の人間は幸せになれるのだろうか。
私は愛される意味がよくわからない。
いつかは壊れてしまうのに、いつかは忘れられて記憶なんてあっという間に積み重ねられていくのに。
あの日…ー
雑草も地面に倒れ込むほどの土砂降りだった。
雨の不愉快な轟音で寝ていた私は目が覚めてしまった。
いつもより気分は良くなかったけど、至って平凡な朝だ。
ゆっくりと階段を降りてリビングの椅子に腰掛ける。
相変わらず雨は降り続いている。
なんでだろう…
外はあんなにも雨の音で騒がしいのに、部屋の中は静まり返っていた。
机の上には記入済みの“離婚届け”が一枚投げ捨てるように置いてあった。
“紺野 結”“紺野 誠”
サインは紛れもなくお母さんとお父さんのものだ。
悲しいとか寂しいとか不安だとか、そんなものは全くなくて、ただ 考えられなかった。何も、一つだって 私の頭は考える事を拒んだ。
一枚の紙に気を取られて、二枚目の紙にようやく気づいたのはそれから五分後の事だった。
真っ白い紙に 、いつもと変わらないお母さんの字で“ごめんね”とだけ小さく書かれてあった。
離婚することに対しての償いの言葉なのか他の何かに対しての言葉なのか私には分からなかった。
昨日まで家族みんなで当たり前のようにご飯を食べていたし、私とお兄ちゃんの成績の事をお母さんとお父さんは冗談まじりに話して笑ってた。
やっと考えることが出来た私はただ夢である事を祈っていた。
「お母さん…どこに居るの?」
お母さんの姿がない事に私は不安になって呟くほどの声で呼んでみた。
返事はなくて、それでもほっとした自分がいた。
本当はお母さんに会うのが怖かった。本当の事を知るのが…怖かった。
その後も呼び続けたけど、どこにも居なかった。
ピンポーン…ー
いきなりのインターホンの音に胸を刃物で突き刺されたような気がした。
「はい…」
扉を開けてみると怖い顔をした男の人と若い女の人が立っていた。
「いきなりお伺いしてごめんなさい…私たちは警察庁の者です。」
女の人が警察手帳を見せながら少し震えた声で話すと、男の人も私を見ながら軽く頷いてみせた。
「今日は君に話したい事があるんだが、時間を少し頂いてもいいかな?」