短編

□3.くっつかないでください
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「莉音ちゃんぎゅー!本当可愛いっ大好きです!」

「あーはいはいありがとう」


教室だろうとなんだろうと、彼には関係のないことらしい。クラスメートも、あまりにオープンすぎる彼が私の彼氏だとは思っていないようで。それが彼の行動を激化させるというか。


「だけど、結城も慣れたもんだよなぁ那月の扱い」


一十木くんは那月に後ろから抱き着かれている私を見て、苦笑いを浮かべる。そして聖川くんはといえば、私を見てくれない。


「恋愛禁止令もあるんだ…抱き着くなどという行為は…」

「聖川くんの言う通りだよ那月」

「だって…ふわふわして柔らかくて抱き心地いいんですよぉ。やみつきです」

「柔らか…!」


聖川くんは頬を真っ赤に染めて、そっぽを向いてしまった。


「那月言うねぇ!」


一十木くんはくすっと笑って、じゃあ俺も!と前から抱き着いてくる。髪の毛がちくちくと当たって痛い。
(女子からの視線も痛い)


「だーめ!」


一十木くんが私に抱き着いた直後、那月は強引に私を引き寄せると、腕の中にいる私の額にキスをして、ふふっと笑った。


「莉音ちゃんは僕のパートナーなんですから」

「ちえーっ」


残念そうに頭をかく一十木くんに真っ赤になる聖川くん。もしかしたら私より顔が赤いかもしれない。


「那月いい加減離してくれないかな」

「…莉音ちゃんは僕が嫌いですか?」


私がイライラしながら那月に拒絶の意を伝えると、彼は急にしゅんと眉を八の字にして瞳を潤ませた。そしてゆっくりと、私から手を離す。

(ああもう可愛い!)


「あんまりくっつきすぎると嫌いになっちゃうかもね」

「やっぱり…やっぱり嫌いなんですか…?」


私はこのしょんぼりとした那月に弱い。まるで捨てられた仔犬のような顔。身長とのギャップは凄まじいけれど。


「…んー。嫌い…じゃない…」

「えっ!…てことは…」


ぱっと顔を明るくした那月は片手で私の両手をふわりと包んで、もう片方の手を腰にまわした。そして耳元に唇を寄せて、ふっと息を吹き掛ける。そして私にしか聞こえないくらいの吐息混じりの声で、攻める。


「きゃっ…やめ…」

「…好き、なんでしょう?ちゃんと言って…?」

「…」

「早く…」


黙っていればぺろりと耳を舐められて、私はいてもたってもいられなくなる。


「好…き!」

「わぁ!いい子いい子!」


やっとの思いで絞り出した声を聞くと、那月は再びぎゅうと私を抱きしめながら、頭をわしゃわしゃと撫でた。









(もうくっつかないでください移ります変態が)
(変態…?)
(自覚あるくせにわからない振りすんな)
(ふふっ)

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