短編2
□Trick but treat !
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今日はハロウィン。私は、彼氏である砂月と俗にいうお家デートをすることになっていた。勿論、昨夜一生懸命作った手作りお菓子をプラスチック製のかぼちゃにいれて手首にさげ、黒っぽいフリフリしたワンピースをみにまとい、帽子まで被ってやる気満々である。
私は彼の家の前で、帽子をちょちょいと直し、持ってきた小道具の杖を握る。そしてすぅと息を吸うと、トントン、と戸をたたく。これが、私が来たという合図。インターホンは使ったことがない。
「さーっちゃん」
「…っ!?」
そっとドアを開けた彼は私の姿を見て、眉間にシワを寄せた。そんな彼は、ジーパンにTシャツ。かなりラフな格好で、ハロウィンなんてなんのその。私は、自分ばっかり意識してしまったのが恥ずかしくて、着いてそうそうにこう告げることになる。
「Treak or treat !」
「…ぷっ。とりあえず中入れよ」
彼は、小さく噴き出すと私の手を引いて部屋へと入っていく。そしていつも私が居座る、二人がけのソファの右側に腰掛けると彼はお茶を出してくれた。
「外寒かっただろう?…それにしても…子供がするみたいな仮装だな。色気もへったくれもない」
はっ、と意地悪そうに笑う彼を、私は挑戦的に睨み返す。さっちゃんなんか、ハロウィンもへったくれもないじゃないか!!!
「それで?お菓子くれないなら、悪戯しちゃうよー?」
「ああ、悪戯やれるもんならやってみろよ、ほら」
そう言って彼は身体を投げ出した。どうせお前にはそんな勇気ないだろう、と視線から伝わってくる。だがそれでは、魔女コスプレをしてきた私の面目丸潰れじゃないか。私は軽く笑っている彼を横目に見ながら、持っていた杖で脇腹をつついた。
「ほれっ!」
ちょちょん…ちょんちょん………
何度小突いたことか。彼は、一層口元を綻ばせて笑いを堪えた。
「…ばっか。お前、やることも子供並なんだな、キスくらい期待してたんだがな。それに…くすぐりは効かないぜ?」
「〜っ!!キスしてほしかったの?」
「ああ、くすぐりよりもキスがいいぜ?」
そう言って笑う彼が気がつかない間に、私はえいやっと彼の膝に覆いかぶさるようにして、強引に唇を合わせた………勿論合わせるだけのつもりだったのだが彼は私の頭を押さえつけ、舌を捻じ込ませて、最後にはちゅっと私の下唇を吸って満足そうに離れた。
「なっ、なにす…っ!」
「お前の襲撃に応えてやったんだが…?お気に召さなかったか?」
彼は楽しそうに私の唇を人差し指でなぞり、私はその指を甘噛みする。少しでも驚かせたかった、だってハロウィンだもん。私のペースに巻き込みたい。
「その表情…エロいな…そんなに俺の指を舐めて噛んで吸って…悔しそうに見つめて…誘ってんのか?」
「はっ!?」
「いって!!!!」
その言葉を聞いて勢いよく彼の指を噛んでしまった。それは思わぬことだったらしく、彼は指を引っ込め痛そうに顔をしかめた。そして私を睨む。
あ、やべ。
焦った私の顔を見て満足そうにニヤリと笑うと、私の背中をがっちりホールドしたまま反動をつけて、押し倒す。そして首筋を強く吸うと、耳元で囁いた。
「Trick but treat...」
「んっ…?」
「お前知らないのか?」
「うん…どういう…?」
「お菓子は貰うが悪戯だってさせてもらう、て意味だ……んっ」
彼は耳にキスして、舌をなまめかしく動かし、楽しそうに耳たぶを甘噛みしていく。その間にも、彼のもう一方の手はスカートの裾の下をすり抜けていった。
「……っ!ずるいっ!!」
(ごちそうさまでした)
(さっちゃんのバカ…)
(お前の魔女姿…意外とそそられたんだぜ?)
(最後脱がしてたくせに!!!)