短編2
□connection
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「…莉音」
「…?」
「お前に触れたい…」
とあるホテルの一室。旅行に来ていた私たちは、たった今チェックインを終え、やっと荷物を降ろしてのんびりと過ごしていたところだった。
私は部屋に一つだけある大きなベッドに腰掛けて、テレビを見ていた。そこに荷物の整理を終えた砂月が腰掛け、私の腰に手をまわしてくる。
「だめ」
私はきっぱりと断った。そしてすっと立ち上がり、向かいのソファに座る。すると彼は私を見つめながら、くしゃくしゃと自らの頭を掻きむしった。
「お前が欲しいんだよ…」
「何を今更…私は砂月のものなんでしょ?」
ふい、と顔を逸らしてテレビに目をうつせば、丁度時刻は17時だった。こんな時間からされたらたまったものじゃない。
「莉音」
「い…や…っ!」
気配を殺し突然目の前にやってきた砂月は、強引に私の唇を奪う。そして強く抱きしめる。
(どうしたのよ一体…)
しかし強く絡まる舌に、私の思考が追いつかなくなるのも時間の問題だった。時折漏れるお互いの吐息と声は官能的で、私の身体はほだされていく。
「…んっ…はぁ……」
「…もう一度聞く。…触れていいか…?」
私の身体は勝手にこくり、と頷いていた。
(こんなのずるい)
彼は普段よりも荒い息遣いをしながら、私を優しく抱き上げ、大きなベッドへと降ろした。そして前髪をかきあげ、露わになった額に軽くキスをする。その後私に跨がると、何の躊躇もなく私のブラウスのボタンを開けていく。
「…ねぇ、どうして…?今日の砂月…なんか変…」
「…っ…悪いな、変で…」
少しだけ顔を歪めた砂月は、はだけた鎖骨に強く吸い付いた。そして跡をつけながら、器用にも下着のホックを外す。
「ん…ぁ……」
熱をおびた自分の艶やかな声。それさえも私の身体に刺激を与える。
しばし彼は離れると、私の下着の肩紐を片方ずつするりと外していく。その際に肩にわざと触れてくる彼の手が焦れったい。思わず身じろぐと、彼は口端をあげた。
「やっとのってきたみたいだな」
「ちが…ぁ…ん」
カップを外されて露わになった私の胸。それをじっと見つめると、彼は大きな手でそっと撫でる。その度にびくびく動く身体は、止めようにも止められない。それを知ってか知らずか、彼は時折私の頂を強く押す。
「あぁっ!」
「随分、敏感だよな…お前」
私の身体全体を愛おしそうに撫でて、彼はもう一度胸に戻ってくる。そしてニヤリと笑うと、片方の胸を強く揉みながら、もう片方の頂をなまめかしく舌で舐めた。
「はぁ…あぁんっ…」
「んっ…ちゅ……はぁっ」
彼は音をわざと聞こえるように吸い付き、ひたすらに舐めていく。そして甘く噛む。
「やぁっ…ぁん」
「我慢…はぁ……しなくていいんだぞ……ん…ちゅ…」
「そんなに…しないで…っ!」
「いやだ…はぁっ…もっと奥まで触れたい…お前の隅々まで知りたい…」
そう言うと、砂月はスカートをたくしあげて既に濡れてしまっている下着の上から割れ目にそって、中指でひたすら上下に撫でていく。
「…もう、こんなに…びしょびしょにしてるのか…」
「砂月の…っ…ぁんっ…せい…でしょ……」
思わず脚を閉じると、彼は無理矢理に下着を脱がせてから、脚を開かせ膝を曲げさせた。俗に言うM字開脚というものか。私の目から、生理的か羞恥心からかわからない涙が流れる。
彼はそっと目尻にキスすると、内股に手をかけてふっと吐息をふきかけた。そして溢れ出してくる蜜を丁寧に舐めとり、舌を中へと侵入させる。
「ひゃあぁあっ」
自分の身体の中に、砂月の舌を許してしまったという事実に、私のそれは彼の舌をぎゅうぎゅうと締め付けた。しかし彼は刺激を止めようとはせず、むしろ私の中で激しく舌を動かした。
「だめ…っ!や…やぁああっ!」
もうすぐ高みにのぼりつめる………という瞬間に、彼は舌を抜いた。そして私に見えるように、指で蜜を掬って舐めた。
「まだ…イくなよ…?」
くす、と笑った彼はその指をぐっと奥まで入れて曲げた。その瞬間に、私は思わず背中を反らす。彼の今日の責めは半端じゃなかった。
「あぁあんっ…砂月…ぃ」
「まだまだだ…」
彼はそう言うと、指を二本に増やしてグリグリと中へ入れ、奥まで突いていく。いくら彼に慣らされているとはいえ、私には刺激が強すぎる。
「あん…やぁっ…はぁぁんっ」
「莉音…どうだ……そろそろ欲しくなったんじゃないか…?」
またしてもイく寸前に彼の指は抜かれ、私の下の口はヒクヒクとして、だらしなく蜜をたらしていた。
「…っ…!恥ずかし…」
「今は二人しかいないぜ…?」
耳元に吐息を吹き掛けられ、甘くかじられれば、私の最後の理性はこともなげに消え去っていった。
「砂月の……っ…いれて…」
「いやだと言ったら…?」
くすくすと笑われ、私は我慢できずに服の上から彼のモノに触れた。
「お願い…」
「言われなくても…俺も限界なんだがな…」
そして彼は素早く衣服を脱ぎ去り、私に覆いかぶさってきた。唇に深くキスをして、優しくそれを中へと入れていく。
「んっ!」
「痛いか…?」
「はぁっ…大丈夫…んっ…」
彼のたくましい腕が私の背中にまわり、壊れ物を扱うかのように優しく抱かれる。彼の温もりが身体の外側、内側から私を包んでいく。
奥へ奥へとゆっくり進み、壁へ当たると彼は私の頭を撫でた。そしてふわり笑う。
「こうしてるのも…アリかもな」
「い…意地悪…っ!」
「わかってるさ…俺のも…大変なことになってるからな…。よし、いくぞ…っ」
彼は私に声をかけると、思いきり腰を打ち付けてきた。パンパンという音に、水音、それにお互いの声が感情を高ぶらせる。
「んっ…はぁ…はぁっ…莉音…」
「ぁん…あぁんっ…!」
「ずっと…愛してる…っ!」
「きゃあぁっ…わ…私も…っ!」
ラストスパートをかけると、彼は私の中へ全てを溢れ出した。私の身体は、それを愛情として受け取った。お腹が……とても熱い。
「はぁっ…はぁっ…大丈夫か…?」
「ん…っ…はぁ…なんとか…」
彼は隣にドサッと寝転がると、私の頭を撫でた。そして、ごめんな、と呟く。私は息を整えながら、彼と視線を合わせる。
「ど…うして…?」
「俺は…子供だったんだよ…。身体で繋がっていないと……何故かお前と離れた気がして……不安だった…」
私はその言葉を聞くと、彼の唇に自らキスを仕掛け、にこり笑う。そして今や汗で湿った髪を、くしゃくしゃと撫でる。
「私は…目の前から消えろ、と言われても…世界の果てまで追いかけるよ?」
「莉音…」
すっと私の手を握ると、彼はそれにキスをして再び強く握った。絶対に離すまい、というように。
「初めて那月とは違う、大事な人ができて……失うのが怖かったんだ…」
いつもは強気に光る彼の瞳が、不安に揺らめいていた。そんな彼の瞳からは涙がこぼれてきそうで、私は思わず彼を抱きしめる。そして言葉を返した。
「それは私も同じ…。だけど、お互いを信じれば…不安はなくなる、そうでしょう?」
「ああ…そうだな」
「私を信じられない…?」
「信じるよ、お前を。だから…お前も俺を信じてくれ」
そうして、重なった唇はしばらく離れることはなく。まるで固く結ばれた私たちの関係を表しているかのようだった。
(じゃあ…第二ラウンドだ)
(は?空気読め)
(まだ俺の舐めてないだろ?)
(バカ!知るか!んなもん!)