短編2

□お砂糖ライフ
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プルルルル…プルルルル…


私は暖かい布団の中で、もぞもぞしていた。こんな朝早い時間に、一体誰が電話をかけてきたのか…。

鳴り止まぬ携帯を無視すること5分。やっと相手が諦めたのか、着信音が消えた。これで私もぐっすり眠れる………と思った直後……


プルルルル…


私はとにかくしつこい電話の主に一言怒鳴り付けようと、電話を1コールでつかみ取る。


「朝からなんなんです…!」

「おはよう莉音」


携帯の向こう側から聞こえてきたぶっきらぼうな声は、様々な意味でパートナーである砂月だった。私は驚いて危うく携帯を投げそうになる。


「朝から…何か用…?」

「お前、昨日遅刻だっただろうが。俺がこれからモーニングコールしてやるから感謝するんだな」

「え……」

「嫌なのか…」


少しだけ寂しそうに呟く彼がとにかく可愛くて、私はふるふると首を振りながら否定をする。


「違う!」

「あ、それと…1時間後に迎えに行く…準備は済ませておけよ、じゃああとでな」


言いたいことだけ言って切られた電話に呆然としながらも、私は時計を見ながら身支度を整える。実は砂月と通学−−−といっても敷地内だが−−−するのは初めてのことで少しドキドキしていた。私はいつもより時間をかけて身支度を整えると、玄関の前でわくわくとしながらベルが鳴るのを待った。


時計と睨めっこしながら、私は待つ。そして針が丁度1時間後を指したとき…………




ガチャ




ドアが開いた。私は拍子抜けして抱えていたバッグを落とした。


「お、おはよう砂月」

「なんだ、準備万端じゃないか」

「おはようございますー!」


後ろからひょっこり現れたのは、砂月の双子のお兄さんである那月くん。どうやら二人で通えると思っていたのは私だけだったらしい。


「ああ、悪い。那月も一緒に行くってきかなくてな」

「大丈夫だよー」


手をひらひら振りながら、私は微笑む。二人きりでないことに多少寂しさはあったが、変に校則違反に思われるのは嫌だったし、何より那月くんには面識があり仲は良かった。


「ああっ…やっぱり莉音ちゃんは小さくて可愛いです!ぎゅー」

「わわわ那月くん!」


突然抱き着かれた私に、不機嫌そうな顔をした砂月は私の腕をぐいと引っ張り、胸におさめた。そして耳にそっとキスをして吐息混じりに囁いた。


「お前は俺だけのもの…そうだろう?だから、俺の隣にいろ…いいな」


そして掴まれた腕は、離されることはなかった。








私は今、幸せである。俗に言うリア充とでもいうものだ。初めに砂月と出会ったときは、こんな人と誰がパートナーになるものかと思ったっけ…。しかし、様々なことを経て現在に至る。自分でいうのもなんだが、今や砂月は私に過保護でメロメロである。

確か初めて出会ったあのときは…クラスのホームルーム。ちょうど自己紹介をしていたとき、隣の席だったことに気付いたのだ。


『…四ノ宮砂月。以上だ』


やる気がなさそうに立ち、嫌々自己紹介をする彼は、視線が鋭く、ふわふわの髪に身長が高いぶっきらぼうな人だった。

第一印象はそれだけ。イケメンだとは思ったかもしれないが。


そしてやっとまわってきた私の自己紹介の時、私は緊張のあまり声が裏返ってしまう。まだ初対面同士のクラスでは温かな笑いも起こらず、私は失敗を引きずって…かみながら自己紹介を終えた。私は火照る身体を冷やそうと手で扇ぎながら席に着く。

するとずっと俯いていた砂月がこう言ったのだ。


『お前、不器用だな。顔、真っ赤だぞ…アイドルコースのくせに、変なヤツ』


初対面でこんなことを言われ、私は絶対にコイツとはパートナーになるまいと心に決めたのだ。



だがそれから程なくして、私は運命に絶望することになる。クラスで行われたパートナー決めのくじ引きで、私たちは見事パートナーになったのだ。


『えっと…6番…6ば…』

『…俺だ』


ぐい、と腕を引かれて見えた顔は四ノ宮砂月、その人で。彼は不満そうに私を睨みつけると、こう続けた。


『中途半端に歌ったらただじゃおかないからな』








「おい、聞いてんのか」


私は砂月に人差し指で頬をつつかれ、現実に引き戻された。そう、今私たちはレコーディングルームで次なる課題に向けて練習をしているところだった。


「あ、ごめん」

「何考えてたんだ」


少し不機嫌そうに、彼は私を後ろから抱きしめた。そして私の髪に頭を埋めると、私を抱きまくらのように強く抱きしめる。

(あー…甘えん坊スイッチ入っちゃった…)


「砂月と出会ったときのこと、思い出してたの」

「…俺と…」

「私、こんなに砂月が甘えん坊で寂しがりやさんだとは思わなかったよ」


そして、私は身体を反転させると、少し照れて顔が赤くなっている砂月の頭をわしゃわしゃと撫でた。すると、彼は私から視線を逸らし何やらぼそりと呟いた。


「それは…お前と出会ってからだ…」

「え…?」

「なんでもない」


私が聞き返すと、彼はふわりと笑ってお返しにと私の頭を撫でる。そして、ニヤリと笑う。


「…だが、お前に甘えん坊扱いされるのは癪にさわる」

「…?」

「あのなぁ、お前は俺をわかっていない」


そう言うと、彼はいきなり私を床に押し倒す。私の頭の横には彼の両腕がついて、今にもキスされてしまいそう。


「俺はいつだって…お前を欲しているんだよ…」

「あっ…さ、砂月…?」


耳元で吐息混じりに囁かれ、私の身体に緊張が走る。こんな体験は初めてではないが、レコーディングルームでなんて…


「お前は俺をおちょくりすぎだ…少し、身体にわからせてやる必要があるな」


砂月は楽しそうにニヤリと笑うと、私の耳元から首筋にかけてを舐める。そしてリボンをすっと解いてブラウスのボタンを2〜3個開けると、鎖骨に強くキスをした。


「ん…っ…ちゅう…はぁ…」

「あっ…ん…だめだって…!」

「大人しくしてろ…気持ち良くしてやるから…」


私は、砂月の甘い言葉とその後降ってきた砂月の甘く刺激的なキスに酔って…身体を預けようと目を閉じたそのとき………



バンッ



「さっちゃん!差し入れですよぉ!」


鍵を閉めていなかったレコーディングルーム。ノックもせずにドアを開けて入ってきたのは、那月くん。しかし、それから彼はにこにこ笑って、


「ふふっ…おとりこみ中でしたかぁ…ごめんねさっちゃん」


そして何事もなかったかのようにドアを閉めて、彼は行ってしまった。彼は私たちのことを知らなかったはずだが、彼には何でもお見通しなのかもしれない。鈍感に見えるのに。

なんにせよ、私は少しだけホッとした。





(よし、続きだ莉音)
(え?ちょ…やぁっ…)
(身体は悦んでるぞ…)
(もうっ!)

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