パカッ
メルボ(メールボックス)を開くのにいまだかつてないほどの緊張を覚える。
が、あまりにも返信が遅いと、これまた先輩に失礼になってしまうと思い、数回ほど深呼吸をした後目を開けた。
“謙也先輩
re:登録完了(^^)!
浪速のスピードスターは返信も早いっちゅー話や!”
持ち前の明るさで笑いを取ろうとする健気な姿勢。
文中にさりげなくちょこんと入れられた顔文字。
それだけで文を和ませ地味すぎない男のメールがユウキの女心をくすぐった。
「ん、どないしたんユウキ、そんなにやけた顔して気持ち悪ッ」
『それが親友の言葉!?でも今はご機嫌だから許しちゃうんだぜ、見てよゆずこのメール』
「どれどれ……って謙也先輩やん!よかったなあ!」
『うんうん、そうなの〜。なんて返信しよ?』
「んーちょいとかしてみ」
カチカチ
「これなんてどや?」
“謙也先輩
ありがとうございます!!
さすがです♪あ、先輩よかったら今日一緒に帰りませんか”
『なななな何ゆうとんねんゆず!そんな、いきなり帰るなんて…!ハードル高すぎやろ!』
「こんくらいせな、先輩はあんたを"後輩"としか見ぃへんよ。それにもう送信しちゃった☆」
『しちゃった☆じゃあないわゆずの阿保ー!(泣)絶対図々しい女って思われた…』
「そんな落ち込まんとき!まだわからへんで…ほら、返信来よった!」
『う…なんて書いてあるん…?』
「よかったなあ!ユウキ"おん、ぜひ"だってよ!」
『え、それまじで言ってる…?』
「まじまじ!まさかあんたは親友を疑ってるんやないだろうな?」
『いやそれをゆずに言われても…でもほんま嬉しい!!』
今なら天にも昇れそうだよ!そんなことを言ったら馬鹿じゃないのと言われた。相変わらずゆずさん手厳しい…!それでもわたしの緩んだ頬はなおらない。全く…と眉を下げて、しかし嬉しそうに笑ったゆずにどうしようもない愛情が生まれた。
『ゆず、ほんまおおきに!愛してるで!』
「いや愛は遠慮するわ。イケメンで足りてるから。」
『ツンツンなゆずさんも素敵!』
「きしょい」
『………』
(此れしきのこと…!うちはめげんで!)