スイッチ。
□09.好きな人
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部活の帰り、何か知らんけどそういう話になった。
俺は好きな人おらんって言うて通してたけど、
たっちょんがポロッと言うた。
「俺おるで。」
…うそ。
俺そんなん聞いてへんで。
「まじか!誰!?」
「さぁ誰でしょう」
──“ドクン、ドクン”
何で黙ってたん?
あんだけ一緒におんのにさ。
「えー教えろやぁ…ほんならどんな奴?」
いや、止めて。
聞きたくない。
「んー…優しい、かな。」
やめて。
「でもそいつ俺の友達のこと好きやねん。」
「へぇ、大倉には珍しい叶わん恋か。」
「まぁなぁ…その友達だって満更でもなさそうやし。」
そんなんやのに好きなん?
そんな好きな人が居るとか、聞いてへん。
「その友達の方が大事やし。応援するって決めてん。」
「うっわ、大倉男前!」
俺以外の奴のための優しさなんか、
惨めなだけや。
それでもかっこよくみえてまうから、余計切ない。
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