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□だって、兄妹だもん
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乾が家に帰ると、妹のくろこが何やら台所で作業をしていた。

「ん……?くろこ、何をしているんだ?」

「あ、お兄ちゃん!お菓子作ってるんだー」

台所を見ていると、確かに今お菓子の為の薄力粉を量っているところだった。
材料的には、マドレーヌかクッキーか菓子パンだろうか。

「しかし……何故いきなりお菓子作りなんて……ああ、もしかして」

不二のためか?って言おうとしたが、途中で妹が割り込んできた。

「そうだよ!テニス部に差し入れ……っていうか、日頃お兄ちゃんがお世話になってるから、お礼にって思って」

予想は外れたらしい。
だが、くろこが少なからず不二に好意をもっていることは、我がデータによれば火を見るよりも明らかなので、テニス部に差し入れというのは建前である可能性も少なくない。
それなら、テニス部の差し入れにお菓子を作っていることだって辻褄があう。ただの差し入れなら、ドリンクを買って渡す、というのでも当然ありなのだから。
わざわざ手作り、しかも女の子らしさをアピールできるお菓子を選んだことは、確実に不二を意識してのことだとわかる。

「しかし、……くろこは料理したことがないだろう。失敗する確率82%だな」

「うわ、失礼!お兄ちゃんには絶対上げないから!」

怒らせてしまったか。
しかし、くろこが料理をしたことがないというのは本当のことなので、先ほど俺が述べた「失敗する」という結果は、高確率で起こりうるだろう。
それでも、成功するというなら、それは新たなデータになるし、失敗しても、それはそれで俺のデータの精度がますます上がるので、どちらに転んでも好都合だ。

「ふ……いいデータを期待している」


さて、そろそろ風呂にでも入ろうか。
その前にデータの整理でもするか。



乾は明日の部活の光景を想像しながら階段を上り、自室へと向かった。













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