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□ヘタレ注意報
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こんにちは、竹本くろこです。

そういえば、皆さんご存知でしょうか。
飄々とした、コート上の詐欺師と呼ばれるアイツが、中1まで超ド級のヘタレだった、ということを。





受験に合格して、晴れて立海大附属中学に通うことになった私は、新しい学校の新しいクラスで、新しい仲間との出会いを想像し、心躍らせながら校門をくぐったのだった。

隣の席には、白いの。

何が白いって、透き通るような肌もそうだけど、何といっても頭だ。
こんなんでよく合格したものだ。
わりと小柄な白いそれは、私の隣の席でなにやらふわふわ揺れていた。

なんか気になるんだ。
この白くてふわふわしている細っこい子が。

そこで、入学式を終えて完全に浮かれていた私は、その男の子に声をかけることにした。

「ねえ、アンタのそれって地毛なの?」

踏むべき段階(自己紹介とか、自己紹介とか、主に自己紹介とか)を軽くすっ飛ばしたような気もしなくはないが、こんな頭をするくらいだから、相当粋がったガキんちょ(同い年だけど)なんだろうと高をくくっていた私は、さして気にも留めず相手の反応をわくわくしながら待った。
しかし、その男の子と言ったら、私に話しかけられた瞬間、ビクッと肩を揺らすと、いきなり

「すす、すいませ…!こ、こんな髪色ですいません、ごごごめんなさい!!謝る、から…そんな怖い目でみないでくんしゃい……っ!」

とか、泣きそうな顔で言うから腰が抜けそうになった。



何なんだコイツ、巷でやはりのヘタレボーイかなんかなの?そうなの?


「なんでそんな怖がるのよ」

「ひぃっ!ごごごめんなさいいいい…!!」


頭を抱えて丸まる白いのが、可愛いっちゃ可愛いけど、だめだろこんなんじゃ。絶対友達できないって!
ここは、私が一肌脱いであげるべきなのではなかろうか。

「だから怖がらないでって。私、竹本くろこっていうの。アンタと友達になりたいなー。名前なんて言うの?」

私が“友達になりたい”って言った瞬間、隣の白いのは一瞬、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていたが、すぐにその顔は照れたように綻んで小さなひまわりみたいになった。
すっごく嬉しそうなのに、なぜかまだおっかなびっくりな感じで、自分の名前をいうまでに、視線が何回も私と自分の膝の上を往復して、最終的にものすごくもじもじしながら、顔を真っ赤に染め上げながら、言った。

「に、…仁王まさはる、じゃ。その…まーくんと、お友達になってくれるんか?」


この子はいったい何なんだろう本当に。
かわいすぎて仕方がない。
まさかの一人称「まーくん」いただきました!!めっちゃ可愛いです!期待を込めたそのうるうるした瞳が本当に可愛いです!こいつ本当に同じ中1か!って疑いたくなるほどかわいいです。でもちょっと、そのヘタレ具合、男の子としてでどうなのよ。
って、頭の中でいろいろ悶絶してみたけど、いつまでも放置してちゃかわいそうなので、

「うん、もちろん!今から私と仁王はお友達!」

といったら、複雑そうな顔をした。
おい、待てなんなんだ。

「……ぁーくん」

「え?なに?」

「だから…その…」

「なに?はっきり言って」

「……!まーくんって、呼んでくれないんか?」

「!!」

ずっきゅーん!
だめだ、本当にダメだ。わんこよろしく、真っ白な耳としっぽが見えた!
これを断るやつがどこにいるというのだろうか、いや、いない。(反語)

「まーくん!まーくんって呼ぶね!だからくろこって読んでね!!」

嬉しすぎてまーくんの手を握ってぶんぶん振り回したら、「い、痛いぜよ…くろこちゃん…」とか赤面しながらまーくんが言ってて、まーくんの私とは反対側のお隣さんの七三眼鏡くんに笑われてしまった。






これが、ヘタレ仁王との出会いで、

この次の日から、このヘタレわんこ再教育計画は始まったのだった。








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