中編
□30日
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「あれって…、マサトくんじゃない?」
「えっ?」
アコの指は少し離れたカフェを指していた。
そこには確かに、マサトがいた。
でも、その正面には、
「彼女さんかなぁ?」
可愛らしい女子の姿。
彼女には見覚えがあった。
同じクラスの瑪類 千里(メルイ チサト)さん。
眼鏡をかけた、女の子らしいふわふわした感じの人だったと思う。
「嘘だろ…?」
「…みーくん?」
呆然とカフェの2人を見ていると、あちらもそれに気づいたらしく、俺の方を見た。
頭の中で何かが弾けたような気がした。
「…アコ、行くぞ。」
「え?ちょっと、みーくん?」
驚いているだろうアコの言葉を無視し、細い彼女の腕を掴んで、歩を進める。
ずいぶん乱暴だと思った。
が、止めることは出来なかった。
「…浮気って、酷い裏切り、だよな…。」
ポツリと呟いた言葉は、人の波に虚しく吸い込まれた。
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