中編

□25日
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…寝る子は育つらしいけど、マサトはもう育たなくて良いだろ。

「…何時間寝るんだよ…。」

一度、目が覚めたのは、ちょうど3時間前。
午前8時のことだ。
昨夜、いや、今日の朝?…まぁ、午前1時に寝たとしたら、10時間は寝ていることになる。

…寝過ぎだろ。


「ふぅ…。」

いくらか抱き締める力が弱まり、抜け出すことはできなかったが、体の向きを変えることは出来た。

って、余計に恥ずかしくなってどうするんだよ!
馬鹿だろ、俺…。

と、1人でもやもやしているなか、ふと上を見ると、端正な顔がどこか悲しげに歪んでいた。

もしかして、

「疲れてんのかな…。」

俺は不器用だから、仕事を上手くこなせない。
そして、その分の仕事はマサトにいってしまう。

その他にも、俺はマサトに嫌になるほどの迷惑をかけている。

疲れるのも無理はない。…のかも。

「ごめんな…。」

ぽんぽんとリズミカルに頭を撫でる。
普段はこんなことしないから、なんだか恥ずかしいな…。


「フッ…。」

「!!!」

まさか、起きて…!!
…ないか。
良かった。

いきなり笑うから、起きてるのかと…。

どうやら、俺が撫でたことで安心したらしく、表情が穏やかになった。


…やっぱ、かっこいいなぁ。
羨ましいや。


チュッ


「!!!!?!!!!??!!!」

待て、待て。
今、俺は何をした?
チュッ、とか聞こえなかったか?

じゃあ、キスだ。


待て、待て。
今、目の前にいるのは誰だ?
唯一無二の親友じゃなかったか?

じゃあ、マサトだ。


ってことは、俺は今、『マサト』に『キス』をした…?



「っ、あ、わっ、ぅわぁああぁぁあぁあ!!!!!」



そのあとのことは、あまり覚えていない。

確か、ものすごい力で腕から這い出て、ものすごい速さで着替えて、ものすごい形相で家に帰った気がする。

母さんに心配されたけど、うまく誤魔化したのを覚えている。

バイト先に急用が出来て行けないと、連絡をいれたのも覚えている。


マサトに連絡をした記憶は、ない。

携帯の電源を再び入れた記憶も、ない。



…俺、最悪じゃんか。



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