THW

▼何もない日
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地下と地上あわせて30階の建物。見た目には普通のビルと変わらない、むしろ小さめな感じもするそれは埼玉国の基地である。自由に出入りは出来るものの建物内の構造は複雑でまるで迷路のようだ。万が一の事態に備えているのだろうか。


そんな中、幹部それぞれの自室がある階の廊下を一つの影が行き交っている。もう少し詳しくいえばとある一室の前をうろうろし、ドアをノックしようとしたり、思いとどまり再びうろうろ歩き回ったりしている。白と黒のツートンカラーのショートヘアーを揺らし幼さの残る少女、夜野蛍(よるのほたる)は悩んでいた。


(せっかくのお休みなのにぃ!みどりさんとお出掛けしたいのに、声を掛ける勇気がでません!もう!私のバカ!弱虫!意気地無し!)


***


そんなとある一室内。外の悶々とした子など知るよしもない緑色の髪と丸いヘッドフォンを特徴にもつ少女、風野緑里(かざのみどり)は伸びをした。

「ふわぁ…!久しぶりのお休みだぁ!」

普段は埼玉国の幹部で東京を争う戦いに身を投じているが、日頃の成果や貢献が実り今日は幹部全員が指導者から休みを貰っていた。

「溜まってるCDをプレイヤーに落とそうかなー。よしっ!そうしよう!」

フフフーンと鼻唄を奏でて棚から大量のCDケースを取り出しプレイヤーの側へ積み重ねていく。室内には既にお気に入りのガールズバンドの歌が流れている。ごそごそと棚をあさりながら探しものをするが目当てのものは見つからない。

「あー、ないや…。お兄ちゃんに貸したままかな…?訊きに行ってみよう」

床に積み上がったCDの山とかかりっぱなしの音楽をあとしにて、兄の部屋へと向かうべく自室のドアを開けた。ガチャとノブを回して扉を開くと見慣れた少女が目の前を通りすぎる。



「あっ、蛍ちゃん!」

「!!」




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