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□底辺は極彩色
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最初は聞き間違いかと思った。


ここんとこ借金返済のために働き詰めで疲れてるし……。そんなまだ若いのに疲弊しきった僕の身体が、『幻聴』という手段を借りて不調を訴えているのかと。
だからこそ『もう一度お願いします』と聞き返したのに、繰り返された言葉が先程と何ら変わらなかったことに愕然とした。



「そういう訳で、俺はコイツと結婚する」
「…………。………え?え、えぇぇぇぇっ!」



およそ言いそうもないことを平然とのたまった師匠の傍らにいる人物は、僕とさほど歳も変わらない感じだ。
ロリコン……犯罪者……という言葉が次々と頭に浮かんでは消えていく。


「なんだその蔑んだような眼は。借金上乗せされたいのか?」
「いっ……!?いいえ、滅相もない!た、ただ……ちょっと驚いてしまって……」
「勘違いすんな。将来的にって話だ」
「将来………」


そう言って笑う師匠の腕は、ごく自然な動作で傍らに立つ人の方に伸びていった。
頭上できっちりと纏められた柔らかそうな黒髪を指に絡め白い頬を手の甲で擽ると、その人は微かに目を細めて肩をすくめる。目元をほんのりと染める姿は、非常に可憐で可愛らしい。

彼女の反応に満足したらしい師匠は、その華奢な肩に腕をまわし唐突に引き寄せた。
突然のことによろけた身体を師匠が力強い胸板でしっかりと受け止める。そのままスッと手のひらを下に滑らせ、滑らかな腰の曲線をなぞり始め………って、


「弟子の目の前で何をやってるんですかぁぁぁ!てゆうかそれ以前に触るのはダメです!普通に犯罪じゃないですか!」
「あ?何言ってる、本人が嫌がってねぇだろが」
「そういう問題じゃありません!キミも、この人がどういう人だか分かってるんですか!?この歳から人生棒に振っていいんですか!」


僕の剣幕に師匠は面倒臭そうに彼女から離れ、胸ポケットの煙草に手を伸ばした。
師匠の煙草は匂いがキツいから嫌なことは嫌だけど、目の前で性犯罪が起きるよりは全然いい。思わず安堵の息を吐き出して再び顔を上げた僕の瞳が捉えたのは、何か物凄く物騒な気配を背負った彼女だった。


「……え?えーと、なんですか……?」
「………テメェ、年に数回しかねぇ元帥との時間を……」
「へッ?え、ちょ、ちょっと………。し、師匠!この人なんなんですか!?師匠!師匠ーッ!」
「うるせぇぇぇ!死ねモヤシィィィ!」
「ちょ、まっ、うぎゃあぁぁぁぁ!」



容赦なく斬りかかってきたその人の声は地を這うかの如く低く、間違いなく男性のそれだと思い知らされながら………僕の意識は薄れていった。

 
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