Gift

□君に心から終焉
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人生の終盤ってのはもっと劇的に悲劇的に。

そう疑いもせずに思っていた。彼の最期の時はきっとオレの腕の中で。絶望にくれるオレを呆れたような目で見る彼が逆にオレを励ましてくれて、オレは情けなくも更に泣き崩れるに違いないって。
でも現実は全く違っていてそこにはもう通り過ぎた哀しみの跡しか残っていなかった。泣くことも出来ない、ただただ虚しさが積もっていくだけ。焼き付けて一生記憶しておこうと思っていた最期の姿は跡形もなくて、オレは生涯その機会を失ってしまった。






「………」

数度瞬きを繰り返した先には、すっかり見飽きた天井の模様が広がっている。

寝不足からかガンガンする頭を抱えて横を見ると、決して暢気には構えてられないだろう時刻を指す時計が目に入った。昨日も一昨日も遅刻したし、さすがに今日は起きなきゃマズい。
込み上げるダルさを我慢してササッと身仕度を整えると、朝食上等とばかりにそのまま小走りでドアの外に飛び出した。



「あっラビ、おはようございます。今日は遅刻せずに済みそうですね」
「うっすアレン。オレだってそんな毎日毎日遅刻してるワケじゃないさー」

最寄り駅のホームに駆け上がると見知った顔に出くわした。
オレは3年、後輩のアレンは1年生だけど、初めて話した時から妙に気があって割とフランクに付き合える友人の一人になっている。

「……ちょっと顔色悪いですね。また例の夢でも見たんですか?」
「アレン正解、またあの夢見ちゃって目覚めが悪いったらないさぁ……」
「気にしてるから余計見ちゃうんじゃないですか?夢は夢なんだし、あまり考え込まない方がいいですよ」
「うーん、それもそうなんだけど」

その夢に他でもないアレンも出てきてるなんて、さすがに気味悪がられそうで本人には言えない。
あやふやに苦笑いを浮かべるオレをアレンが何か言いたげにジッと見上げてくる。然り気無く目を逸らすと、ちょうどホームに入ってきた電車にするりと乗り込んだ。


 
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