Gift
□2013年お年賀
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振り向いて見た光景に唖然とする。
そもそもなんでオレ振り向いたんだっけ………そうだ確か、ふふってユウらしからぬ笑い声が聞こえたような気がしたんだった。
目の前のユウは……というか二人共、決して笑ってはいないが(むしろどちらかと言えば仏頂面に分類されるんだろう)、漂う穏やかな空気だけはイヤでも感じ取れてしまった。
「へぇ……スゲェな、そうやって生地に練り込むのか」
「ええ、分量のバランスで少し苦労しましたが、粗方理想のものが完成したかと」
「ふぅん、お前が納得したもんなら期待できそうだな」
そう言って目尻を下げるユウに、向かい合う中央の監査官……ハワード・リンクが照れたように頬を染める。
……つーか何、なんか色々情報が多すぎて理解出来ない。
大体この二人ってこうやって会話するほど仲良かったんさ……?そもそもそんな接点があることすらオレ、知らなかったんですけど?ユウってば甘いもの苦手なくせに、ケーキの話題に乗っかったりもするんさ!?
……一度状況を整理する為、静かに目を閉じる。
あのハワード・リンクとかいうホクロふたつがアレンの監視に付いてから早数ヵ月。
お互い任務続きで、アレンと会うのも数ヵ月振りだ。今日の0時から行われる毎年恒例のニューイヤーパーティを楽しみにしていたらしいアレンは、大急ぎで任務を済ませて帰ってきたらしい。
……というのが今しがたこの食堂で出会ったアレンから聞いた話。恋人であるユウと二人で昼飯中だったオレは、そのままアレンと他愛もない話題をしばらく続け……ふと耳に入った息を吐く声に隣を振り向いたら今のこの状況だ。
や、整理してもやっぱりわからんさ、なんでユウとこのホクロふたつがこんな親しげにしてるんさ……!?
「……ああ、ラビ気になります?あの二人最近妙に仲良いみたいなんですよねー」
「……!?」
不意にアレンが発した台詞にビクッと肩が震えた。
そんなオレを見上げて、アレンがどこか楽しそうに微笑む。
「好きみたいですよ、彼」
「……は?だ、誰が?誰をさ?」
「見てればわかるでしょう。リンクが神田をですよ。て言うか僕、気になって本人にも聞いちゃいましたし」
「ハァ!?」
思わず声を上げたオレを煩いとばかりにユウが目だけで振り向いた。斜め向かいのホクロふたつからもつめたーい視線が降り注ぐ。
ヒドイ……そんな迷惑そうにしなくたっていいのにと不満を抱きつつも、オレは慌ててアレンに向き直り声を潜めた。
「そ、それであのホクロふたつ、なんて……?」
「本人はそんなこと無いって否定してましたけど。でも明らかに動揺してたし顔も真っ赤だったですし。だから僕、神田はラビと付き合ってるって教えてあげたんですよ。神田はどう思ってるか知りませんが、どうせ教団の皆知ってるんだし構わないでしょう?」
「そりゃそうだけど……ユウが聞いたら怒りそうさ」
ユウとオレが恋人同士という事実は一応表沙汰にはしていない。
そもそも中央の教えに反するということもあるけど、ユウが嫌がるためと、オレもうちのジジイに知られたら厄介ってことが大方の理由だ。……が、夜の廊下だのベランダだのでイチャイチャしてたのがどうやらマズかったらしい。オレらの関係は、あっという間に教団中に広まってしまった。
嫌がるユウをオレが大丈夫と宥めてコトに及んでたせいだから表立っては言えないけど、オレとしてはその方が色々牽制にもなるので都合が良かった。……まぁ、ユウは教団中に知られてるなんて知らないだろうけど。
「……それで、二人が恋人同士だって聞いたらリンクってば一気に顔面蒼白になってしまって」
「フーン、いい気味さ」
「足元とかフラフラしちゃって、あんまり可哀想だったから僕、応援してあげることにしたんです」
「へぇー………ってアレン!なんてコトしてくれてるんさ!?」
ホクロふたつめ、まさかアレンのほぼ悪ふざけな応援を本気にして張り切ってんじゃないよな……?
アレンの黒い笑みに悪寒が走り、慌てて隣を振り返る。
その瞬間………オレは再び固まってしまった。