Gift

□浮上して迷彩色
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「ユウってほんとキレーな顔してるよなー。なんであれで男なの?俺らと同じもん付いてんだぜ信じらんないさ。なぁアレン」
「そ、そうですかね?」
「ユウと一緒にお風呂入ったことある?結構ガッカリするさーあれは。あーホントに男なんだなーって実感しちゃって」
「へー……」
「ユウが女だったら俺、ガチでストライクなのに………あ、でもユウってばあの性格だし、そーゆーの目当ての男は絶対近付けなさそうさー」
「そうなんですか……」


一緒にお風呂どころか身体の関係を持ったことがあります。………とは、いくらなんでも言えなかった。
僕がまだ新人だからと色々教団のことを教えてくれているラビに失礼だし、それ以前にそんな個人的な下の話をカミングアウトする趣味もない。


でも既に次の話題へと移行しているラビの話を上の空に聞きながら僕は少し安心していた。
初めて出会った時があんなだったからか、もしかしたら神田は誰にでも脚を開いてしまうような……なんと言うかそういうザックリとしたタチの人間なのかもと思っていた。………が、ラビの話を聞くに、どうもそういう訳ではないらしい。寧ろそういうのとは最もかけ離れたキャラのようだ。

師匠と神田は未だ婚約者の関係を続けている。神田が意外とストイックな人だったことは本当に良かった。
あの浮気性の師匠に同じく浮気性の嫁(しかも男)が付いてしまったら、その婚約関係はほぼ破綻していると言ってもいい事態になってしまう。そんなの偽装婚約もいいところ、そんな茶番に振り回されるのは御免だ(現にもう振り回されてるし)。


……そこまで考えて、ふと我に返って自嘲してしまった。結局僕は、単に神田がそんな人間じゃないって思いたいだけなんだろう。そんなことはもう前から気付いてるけど。


僕らの座る席からは遠く離れたとこに居る彼の横顔がなんだか疎ましい。
ハァッとひとつため息を吐き、僕は抱えていたスープ皿の中身を一気に飲み干した。目の前に積まれたカラの皿の山を若干引き気味に眺めているラビの物言いたげな視線を無視して、ガタリと食堂の椅子から立ち上がる。

「……ラビ、僕もう今日は疲れたので部屋に戻ります」
「へ?ああ、遠出の任務だったもんな。ゆっくり休むさアレン」
「はい、ありがとうございます」


ニコリと微笑むとラビもニッと笑顔を返してきてくれた。
そんな爽やかな雰囲気とは真逆の感情を胸に渦巻かせて、僕は足早に自分の部屋を目指した。















「ああもう、やだな……」

でも若いんだし仕方ない。
そう思い直して僕は自室のベッドにダイブした。どうやっても意識せざるを得ない自分の下半身はさっきからやたらと存在を主張してくる。……神田を見てるといつもこうだ。そんな自分に本当に嫌気が刺す。


………でも、嫌気が刺そうがなんだろうが処理するものは処理しないと。うつ伏せから仰向けに寝返った僕は、そっと自分の身体に手を這わせた。
オカズは専らあの日のことだ。実際この教団に入り初対面の態度を貫く神田と出会ってからは、彼をそういうことに使うことに前以上に罪悪感が付き纏う。でもどうしても考えてしまうのは止められない。ここ最近は既に諦めてしまった。

再び溜め息を吐いた僕は、その息を詰めて素早くベルトの前を緩めた。


 
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