僕らの可愛い人

□case_H
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この春、ヒナタも高校3年生になった。

男運の悪さは相変わらずで、あの作戦を実行するようになってから2年程の間に、兄貴と俺は少なくともそれぞれ3人ずつは火の粉払いをしている。

妹から好きになったことは無いらしく「告白されてもすぐに振られる」と、自信をなくしていた時期もあったが元来ポジティブなため今では開き直っているようにも見える。

ただ、告白されると相手を好きになる性格も変わらないようで……。
兄であり父親である兄2人としては、まだまだ頭を悩ませている――。


【case3】

──チリンチリン♪

「いらっしゃい、ま せ」

可愛らしい笑顔で出迎えた女性店員が思わず動揺で声を詰まらせる。同時に、土曜の午後3時、カフェ店内の9割を占める女性客の視線が入口の2人の男性に一点集中した。

「ヒナ、どこかな?」
「捜すのはヒナタだけじゃないぞ」
「わかってるよ」

ちょうどお店の中心にあるテーブルに通されたキョウスケとアオイは、周りからの熱い視線も特に気にすることなくヒナタと”ある人物”を捜していた。






『ヒナ、最近カフェのバイトはどう?』
『ん〜覚えることありすぎて大変だけど楽しいよ。お兄ちゃん達も来てくれればいいのに』
『今のヒナのシフトだと仕事と重なってなかなか……ね、兄貴?』
『そうだな』
『ま、誰かにイジめられてたりしたら飛んでいくけどさ』
『ふふ、みんないい人だよ。オーナーは頼れるおじさまって感じだし、チーフは美人でカッコいいし、先輩も可愛くて丁寧に教えてくれるし、優しい彼氏もいるし、あと――』
『待て』
『彼氏?!できたのか?!』
『?うん。言ってなかったっけ』
『聞いてない』
『お店の先輩で、このまえ告白されて付き合うことになったの。アオイお兄ちゃんと同い年だよ』
『お店の』
『先輩……』
『そう。お店には内緒だけど、こっそりシフト合わせたりしてるんだー』
『………………ヒナタ、次の出勤はいつだ?』






「お兄ちゃん!来てくれたんだ」

オーダーを済ませたころ、奥の方にいたヒナタが2人に気付き最高の笑顔で駆け寄ってくる。
ストライプのベレー帽に太めのタイとサロンエプロンのユニフォームは、ヒナタの可愛さをより一層引き立たせていて、キョウスケとアオイの顔も思わず綻んだ。
しかし、今日はヒナタのユニフォーム姿だけを見に来たわけではない。
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