僕らの可愛い人

□case_S
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季節はもうすぐ冬。
夏に彼氏と別れたヒナは最初こそ落ち込んでいたものの、とても良い想い出だったとすっかり元気を取り戻していた。
しばらくは新しい男の影も感じられず、9月の体育祭や11月には文化祭など、学校行事に一生懸命取り組んでいるようだった。

しかし安心していたのも束の間。
皆が一致団結して一つのことに取り組む行事の時は、平々凡々な日常と比べてカップルが成立しやすいというのは自然の摂理だ。

残念ながらヒナも例外ではなく。
続いての憂鬱は兄貴の部屋から始まる……。


【case2】

「は?誰が誰と歩いてたって?!」
「ヒナタが男と歩いてた」
「いつ?」
「今日」
「どこで?」
「駅前」

キョウスケがアオイを部屋に呼ぶときは8割がヒナタに関係することだった。
今回も風呂上がりのアオイを引きずり込み、神妙な面持ちで今日見た事実を告げる。

「単なる男友達とかじゃないの?最近暗くなるのも早くなってきたしさぁ」

「サトシ18歳、サッカー部。ヒナタとは同じ高校の先輩後輩で文化祭がキッカケで話すようになった。サトシの方から告白。付き合って2日目。……手を繋いでる二人をつかまえて聞き出した」
「なるほど。きっと、至極さりげなく振る舞ってそこまでの情報を手に入れたんだろうね」

兄はきっと妹とその彼氏、二人を前にハラワタがグツグツと煮えたぎっていたことだろう。
恐らく実は良い青年なのかもしれない≠ニいう葛藤と戦いながら感情を隠して接していたに違いない。

「で、そのあとどうしたの」
「今度、うちに遊びに来るよう言っておいた」
「え、何それ?」
「とにかくお前も会え」
「なるほどそうだよな。良い子≠セったら問題ないわけだもんなー」


◆◇◆


『大学生になったサトシはサークルや合コンにハマって浮気ばかりして、更には金稼ぎ目的で自分の友達にヒナタの躯を差し出そうとする、ような気がする』


アオイはヒナタの周りにいる男性に対し超越した勘を働かせ、妹に災いをもたらすのか幸せを与えるのかを判断することができる。現時点で百発百中の予想だ。

「今回もアウト……だな」
「そうみたい」
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