僕らの可愛い人

□case_R
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玄関で仁王立ちするキョウスケとアオイに臆することなく、はじめましてとキラキラした瞳で挨拶をしたリョウタはまるで愛らしい小型犬のようだった。

「いらっしゃい」
「…………」

アオイはいつものように人当たりのいい笑顔の仮面をつけ、キョウスケは全くの無表情。兄の心の内を知ってか知らずかヒナタはとても楽しそうである。

「リョウタ君、上がって。わたしの部屋二階なの」
「おじゃましまーす!」

トタトタと階段を上がって行く二人をジッと見ていたキョウスケが、恒例の質問を投げる。

「……アオイ、どうだ?」
「う〜ん、純粋そうだけど残念ながらアウトだね。『将来ヒナタと結婚間近までいってるのに好奇心旺盛な性格がアダとなってキャバクラに通いつめたあげくに借金。ヒナタ大ショック』っていうのが見える気がする」
「今回はかなり将来(さき)のことなんだな」
「まあ、なんとなくだけど」
「ヒナタのことに関してはお前のソレは外れたことがないからな」
「愛情のなせるワザ!って胸張るのは置いといて、そうとなったら作戦練らないとねぇ」


作戦会議をした5月から7月になった今まで、あの手この手を使ってリョウタにプレッシャーをかけたつもりだった。しかし純度の高い天然なのか、ぬかに釘、暖簾に腕押し、全く別れる素振りどころか兄二人にも親しみを持ち始めてるようだからたちが悪い。

「兄貴、もう2ヶ月も経っちゃったけど、どうしよう?」

駅前のショッピングモール。
両手に持ったスカートを交互に自分に合わせて鏡とにらめっこしているヒナタを見ながら、キョウスケとアオイは少し離れたベンチに座って渋い顔をしていた。

「兄貴の作戦も効かないし、オレの作戦もダメダメ。今までにない強敵だよな」

ヒナタがこちらを向いてどっちのスカートが良い?と困り顔をしている。

「赤のチェックの方がいいよ!……って兄貴聞いてる?」
「聞いてる。確かにヒナタは赤の方が似合う」
「違うってば!スカートじゃなくてヒナの彼氏のはーなーし!」
「ああ」
「ホント、たまーにボケてんだか本気なんだか……ん?何見てんの?」
「あれ」
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