頂物
□甘えたいから嘘をつく
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「……氷雨、珍しく化粧なんてしてどうした?」
昨日、
たまには映画にでも行かないか?
と、誘って午前中は僕の家でのんびりしようと言うことになり、来る予定時刻九時五分前に来た氷雨を出迎えた時の第一声だ。
「…………いや、一応毎日してるけど。」
そう言いつつ部屋に上がる氷雨。
「確かにそうだが今日は少し派手目じゃないか?」
勿論、似合ってはいるが。普段のナチュラルメイクに比べればきっちりアイシャドウやチークまでした氷雨は珍しい。
「映画館、暗いから。」
「今までも映画に行ったことあるだろう。」
そのときは普段通りだった。
「あ〜……。そんな気分なだけ。」
適当に流された。
若干疑問を持ちつつ一旦席を立ち、買い置きしてあったクッキーを出す。
「ありがとう。」
受け取る氷雨。
……何となく違和感を感じる。
…………。
「氷雨、マニキュア持ってないのか?」
「…………あ。塗り忘れた。」
今持ってるかな。
そう言ってかばんの中を探し出す。
さっきの違和感は化粧のわりにしていなかったマニキュアか。
「あった。……塗っていい?」
「あぁ。」