混沌
□せんせい
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全部、全部ぶち壊したら、俺はどうなるんやろ。
「白石、お疲れさん」
「オサムちゃん」
聞き慣れた声が聞こえて、部誌を書いている手を止めて振り返った。
相変わらず無精髭の見える彼。
その手には、中学校には似つかわしくないものがあり、もくもくと煙をたてていた。
「…校内禁煙」
「まァまァ」
「俺、あんま好きやないねん」
「………」
顔色を変えないで、先生はそれの火のついている方を携帯灰皿に押し付けた。
それから白石の方へ視線を戻すと、これでどうだと言わんばかりに口角を上げてみせる。
「大人げな…」
「せやかて、俺の相棒はコイツやさかい」
中身の詰まった灰皿をぱたぱたと振って見せ、更に深いえくぼを顔に刻んだ。
白石はじっと彼を見つめているが、その表情は穏やかではない。
反応に困った先生は、冷や汗をたらした。
「………」
白石は書きかけていた日誌を書いてしまって、ページを閉じてペンを仕舞った。
すると、唐突に先生の手にある灰皿を奪い取って、その勢いのままぎゅっと抱きついた。
「…しら、いし」
「タバコなんか体に悪いで」
「え」
「ほんま禁煙してほしいわ」
「えー…無いと口寂しくなるし」
ぽりぽりと頬をかく。
白石の手に力が入るのがわかった。
すると、白石はバッと身を起こして先生を見上げる格好になり、その表情は思いつめたような苦しげなものだった。
「そんなん…お、俺が…」
顔を真っ赤にして呟いた。
それなら、俺がキスをしているからと。
「…マセガキ」
「んっ」
白石は見上げた格好のままでいたので、上からキスをするのは容易だった。