【モーニングコール】
朝6時、突然傍らに置いていたケータイ電話が音をならした。
半分眠ったようなままにケータイを開ける。
[黒子テツヤ]
表示された名前を見るや否や電話に急いで出た。
「お早うございます。火神くん。」
いつもと変わらない、黒子の落ち着いた声。
欠伸を噛み殺しつつどうしたんだよ、と受話器にかえす。
「今日遅刻されると困りますから。」
だからモーニングコールです。と黒子がくすくす笑う。
まだ頭は回らないがふとあることを思い付いて目が醒めた。
そう、とても良いことを。
「まだ寝みぃな。お前がキスしてくれたら起きるかもな」
意地の悪い声で受話器ごしの黒子に言ってやる。
「な、なに朝っぱらから言ってるんですか!」
あんの上おそらく今真っ赤であろう黒子がふざけないでくださいっと叫ぶ。
「ふわあ、ねむ。もう一回寝るか…」
黒子をその気にさせるため、たぶんもう寝れないだろうが嘘をつく。
「え、ちょっ寝ないでくださいっ」
怒ったような声が上がる。
そしてちょっと間があって
「こ、今回だけですよ…」
すると言葉の終わりにちゅ…と控えめなリップ音が受話器から聴こえた。
「…。」
「え、火神くん…?」
突然黙った声に驚いたのか黒子が狼狽える。
バタバタとジャージを来て玄関に。
か、火神くん?とこちらの音が聞こえたのか再び黒子が不安げに聞いてきた。
「今からお前ん家行くから。」ぶっきらぼうにそう言って家を出る。黒子のえ?という声を聞きつつケータイを閉じる。
もうあんな可愛いことをされたから…
受話器ごしじゃ足りなくなった。
走るスピードを早める。
今すぐ、会いたくて。
おはようございます、火神くん
ー電話ごしの声すら愛しくて
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