Mr.Wonder

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「あ、涼太!!」

「えりなっち!」

「来てくれたんだー!」

「当たり前ッスよ、えりなっちの為だからね!仕事休むの大変だったけど…」

「うわ、ごめん、無理して来てくれたんだ…」

「どうしても来たかったから気にしないで?」


今日は修造のラストライブ、所謂卒業ライブってやつ。

キセキたちにも招待状を送ったけど来てくれるかなーって不安だったんだけど、涼太は無理してまで来てくれたことが嬉しい。


「えりなー」

「えりなちゃーん!」

「大輝、さつきちゃん!!」


毎日会ってる筈なのに休みにこうやって来てくれるなんて嬉しい。くだらない、って言われるかなってちょっと思ってるところはあったけど…部活以外では仲良くやっていけるのかもしれない。


「青峰くんってばえりなちゃんのライブだって聞いたら用意早いのよ」

「それは…」


私がいるから、じゃないと思うけどなぁ。


「えりな」

「えりちん〜〜」

「やぁ、誘ってくれてありがとう。」

「真ちゃん、むっくん、赤司くん!」

「卒業ライブだなんて、虹村さんが卒業するのかって実感するよ」

「…そうッスね」


寂しそうな顔しちゃって。やっぱりキセキたちにとっても虹村修造っていう存在は大きかった。

本当に引退してからは顔は見せなかったし自分からみんなのことを聞いてくることはなかった。

逆に後輩が修造の元に尋ねて来ることはいっぱいあったけどね。その時はちゃんと先輩らしくアドバイスとかしてるのを知ってる。


「ついに明日卒業式だからね。えりなちゃん、大丈夫なの?明日、アメリカ行っちゃうんでしょ虹村先輩……」

「うん、でも永遠に会えない訳じゃないしさ。大丈夫だよ」


嘘だ。


「そっか、虹村先輩の代わりにはならないけど私たちがいるからね!」

「そうッスよ!」

「そうだね!にじむーの穴なんてみんなで埋まっちゃうよ!!」


嘘つき、満たせるわけなんてないのに。


「へぇ?そうなのかよ?」

「げ……」

「それはよかったな」

「痛い痛い痛い!!」

「よ、お前ら、今日は楽しんでけよ」

「はい!!」

「私の頭鷲掴みしながら話さないで!!離せ!!」

「オラ、楽屋行くぞー」

「何で!!!鷲掴み!!!しながら!!!引き摺るの!!!」

「楽だから」

「はああ?!」


私の耳には聞こえなかった。




「あのやり取りが見られるのも、今日で最後なんだね」




楽屋でみんなでいつものようにわいわいとした待ち時間を過ごす。

もうすぐで、みんなでやる最後のライブが始まろうとしていた。


「今日はにじむーが久しぶりのメインヴォーカルだね!」

「そうだな」

「ずばり!緊張してますか!」

「してません」

「玲央くんにとっても卒業ライブになるけど緊張してますか!」

「してない」

「……私はしてるのに」


何でそんな落ち着いてるんだ。


「知ってる。お前まじで緊張してるときはめっちゃ話すもんなぁ?」

「え?そうなんです?」

「ほら、何だその口調は」

「あ゙」

「可愛いやつ」

「やめてよー」


むぎゅっと鼻を掴んで離さない修造の顔は緊張してないけど、寂しそうな顔はしていた。


「修造、えりな、そろそろ行くぞ」

「……はい」


鼻から手を離して手を握ればステージまで引っ張っていってくれた。

心なしかいつもより強く手を握られてる気がする。

そして


『今日は俺と実渕の卒業ライブだ、しんみりしねぇで盛り上がってこーぜ!』


始まってしまった。


『俺からお前らに最後のメッセージだ、俺が帰って来た時にでも教えてくれ。』


この日のために玲央くんと修造が作った曲。

みんなが知らない答え。

修造は知ってる答え。







『───戦う先に何が欲しい?』







(勝利なんてありきたりなこと言ったらぶっ飛ばすからな!!)


明日は卒業式。



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