Mr.Wonder

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「な、な…な……!!」

『はい、虹村修造くん1位通過でーす!ラブラブありがとう!!萌えた!!!』

「本当に黙れ!!!!!」


良くなかったことはない。

私たちの微妙な関係を隠していたつもりはない。寧ろバレててもいいと思ってた。

でも、これって…何。

今日は帝光中学の体育祭で私たち2年にとっては2回目となる体育祭で、にじむーとテツくんが借り物競争に出ていた。

テツくんの借り物は「シュシュ」で持ってたさつきちゃんから借りて「ありがとうございました」と言って返してもらったのがよほど嬉しかったのかその場で倒れたのを今テツくんが介抱してる。逆効果でしかないと思うけどそれは言わないでおきます。

そして3年の部になって、にじむーの借り物が『キスしたい相手』だった。

連れ去られた私は、


『ではー、キスいっちゃいましょう!!』


とかぬかすお姉さんの言う通り、にじむーは私にキスをしてきた。

するのはいい、見られるのだって構わない。ただ


「いやああああああああ!!!!!虹村くんんんん!!!」

「あの女あああああ!!!許さない!!!!!」

「いやあああああ!!!」


おわかりいただけただろうか。

悲鳴を。

お聞きになっただろうか。

嫉妬の声を。


「どーすんのーこれー」

「……」


にじむーってさ人気あんのわかってんの?わかってないでしょ?人気あるんだからね?気づいて?というか気付け。

なんでにじむー…無表情でギャラリー見てんの?おい。変な事しないで…よ…

にじむーはお姉さんからマイクを奪い取って


『お前ら、えりなに手ェ出したら…潰すからな』


ゾォっとした。

守られる側なのにゾォっとした。

めっちゃ怖い顔してる

これは……


「にじおこすてぃっくふぁいなりてぃーぷんぷんどりーむ!!」

「あ゙??!!」

「ごめんなさい!!!!」

『お前らもいいな!!俺は部活を引退したからなァ…』


ニヤリと笑うにじむーを見て、元ヤンだった時ってこんなんだったのかなとか思ってしまったごめんなさい。

それだけ言うとギャラリーは静かになって、にじむーは満足したようにマイクをお姉さんに返した。


「行くぞ」

「はーい」


愛されてるなーって思ってもいいですか?

なーんてね。


「あ、次むっくんじゃん!」

「何出んの彼奴」

「えっとね、パン食い競争」

「彼奴の為の競技かよ」

「まぁむっくんが発案者だしね」

「まじか」

「うん、ほら今年の体育委員って私とむっくんじゃん?それで。」

「へぇ…」


バスケ部のみんながいる応援席に戻るとむっくんがスタートラインに立っていた。

この種目は200mで3箇所に設置してある宙吊りになったパンを全部食べたらゴールという単純な奴で、むっくんなら余裕だろう、

それにあのパンは


「むっくん大好き、チョコパン!」

「最早アツシが優勝する為の種目だな」

「おーショーゴくんじゃーん」

「よ、」


隣に座って来たショーゴくんと雑談しながらむっくんの活躍を見守る。

始まってすぐにあるチョコパンを口で取るとパクっとすぐに食べていた。


「飲み物のように食べたッスよ?!」

「馬鹿!突っ込まないの!!」

「だって!あ、2つ目も…!!」


お腹壊さないのかなってくらいペロッとごっくんしちゃうむっくん。

めっちゃ早いし速い。

やばい。


『おっとー!紫原敦くんぶっちぎりですー!!!』


飲み物だ…パンは飲み物だった…


『紫原敦くん1位!!』

「当たり前だし」


ですよね!!!!!


「ショーゴくん最近喧嘩してないんでしょ」

「…おー」

「変わったね」

「そうか?」

「うん」

「ってことで」

「え」

「男子1600mの対決はショーゴくんとにじむーにしておいたからはぁと!」

「はぁ?!」

「よろしくな、灰崎」

「…まじで…?」

「おう、まじだ」


うちの1600mはこういう面白い(仮)対決になる為に1年〜3年混合になってる。因みにリレーじゃなくて1人で1600mだ、頑張れええええ。

んで私は涼太とハードル走でした、勝ちました。


「えりな」

「はいほー」

「ゴールで待ってろ、俺が抱き締めるから」

「あ゙?!俺が勝つっつーの!」

「えりながゴールにいて負けるわけねーだろ」

「…惚気かよクソ」


何か、ゴールで待たなきゃいけなくなった。

まぁいいかぁ…と思ってゴール付近で待っていると意外にもショーゴくんとにじむーは接戦をくりひろげていた。


「にじむううう!ショーゴくううううん!!どっちも頑張れええええ!!」

『おっと!ここで2人の女神からの応援だあああ!!』

「毎回思うけどこの人ちょっとうっとおしい。」


放送委員のお姉さんが解説者席から身を乗り出して叫んでる。

どのカップルにも絶対これ言ってて、それが面白いのかもしれないけどあんまり面白くないよ。少なくとも私は。中学生だから許されるノリだと思うんだよね。あ、今は中学生だからいいのか。


「はぁ?!テメ、まじ巫山戯んな!!」

「やる気出ただろ…っ」

「チッ…アンタまじ、えりなに嫌われても知らねーっ…!」

「頼んだからな…!」


何を話してるのかわからなかった。

でも何かを約束したみたいで、そこから本気をだした2人は今まで以上の接戦をくりひろげた。

でも、やっぱりにじむーの方が速くて差がついてくる。


「えりな!」


ゴールを指差してるにじむー。

来いってことか

スピードを落とさないまま、にじむーはゴールにどんどん近付いて来て


『虹村修造くんゴォオオオオオオル!!!!』

「えりな…」

「おめでとう!!」

「おう、さんきゅ」


その勢いのまま私を抱き上げて力いっぱい抱き締めてくれる。体力まだまだあるなぁ…


「……ありがとう」

「え?」

「なんでもねー」





大切なお前は、何があっても守るから







7色と2回目の体育祭
(それが出来なくなるなんて、耐えられない)
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