Mr.Wonder
□82
1ページ/1ページ
「ちょ…紫原っち。今のスピン相当速くないッスか?」
「んー…そう?適当にやっただけだけど…。……けど何か力が沸いてしょうがないんだよね〜〜〜。本気出したら対味方でもヒネリつぶしちゃうかもしんない。」
「……へぇ」
にじむーがバスケ部を引退してからまだ1ヶ月も経っていない頃むっくんがついに完全覚醒の時を迎えた。
最近のむっくんは急成長とげている。これが完全覚醒なのだとみんなも気づいていた。
そして───
「おいお前…いくらなんでもあっさり抜かれすぎだろうが!もっと気ィ入れて守れよ!!」
「え、いや、やってるよ全力で!!それより青峰くん速すぎんだって!!」
「あ゙あ?!だからって…。〜〜〜〜っ、チッ」
大輝もまた絶好調故の絶不調の中にいた。
大輝が強すぎて、誰もついていけなくなっていた。この全国ナンバーワンである中学校にでさえ、大輝についていける選手は1人もいない。
大輝のあのイラつき度から見ると一軍の選手でさえ全然相手になっていないのだろう。これが天才と凡人の差ってこと。同じ練習を毎日やっていても差は開くばかりなんだと思う。
にじむーと監督がいなくなるだけでこんなにもチームがバラバラになるのか、そう思うしかないほどすでにチームは崩れかけていた。
あの2人の存在がそれほどまでにバスケ部の中ではとても大きな存在だった。
その存在がなくなって精神的に不安定になるところもあるだろう。フルチームで全中制覇したと言う功績はやはり大きい。
頼れる監督にいつも支えてくれていた元主将と言う先輩。
その2人がいなくなってバスケ部は早くも終わろうとしていた。
「…すげ」
むっくんが完全覚醒して初めての練習試合の時、むっくんは確実に点数を取る方法ではなくリスクはあれど自分で決める方選び少し口論になった。
この練習試合ににじむーはついてきていないから私が支えなきゃいけない。
監督の言葉が、私を苦しめた。
『どうせとか言わないでやってくれ、見放したり諦めたりしないでやってくれ。』
私が今更何をしようとあの結末に変わりは無いだろう。今私が何をしたってむっくんは今の時点じゃ救われないだろう。
それは白金監督が私に願ったことを裏切ることになることはわかっていた。
それでも私は何も言わないまま、ただ見ないふりをして、何も知らない女の子のマネージャーを今日も演じる。
「えりなちゃん!むっくんが…速くなって…」
「…うん、そうだね」
「あの速さって1軍ところかキセキにも負けないかもしれない…」
そう、むっくんは身体のでかさからスピードはそんなに速くなかった。
けど、もう違う。
キセキの世代と変わらない、速さ。
「怖い…別人みたいに成長するなんて…私はこの成長が怖い。」
「…さつきちゃん」
大輝が変わってしまってから、さつきちゃんはむっくんに成長を恐るようになった。
むっくん完全覚醒は、マネたちの精神を犯していた。
「えりな」
「ん?どうしたの、修造」
「元気ねーなーって思って」
「…私は元気なんだけどさー」
家に帰ってソファーに座ってテレビを観ていた修造隣に座ってもたれかかると修造は頭を撫でてくれた。
落ち着くな…
「俺はもう関わらねーけど話くらい聞いてやるから話せ」
「…むっくんがさー」
「紫原…?」
「大輝に続いて、覚醒しちゃったんだよねぇ」
「……そうか」
「支えなきゃなーとは思っても。それで望んでない方に変わっちゃうのかなとかウザがられたりするのかなとか…ほっといた方がためになるのかなって」
「俺は」
「ん?」
「俺なら、いつも通り接してくれるだけでいい。」
「…なるほど、むっくん用のプロレス技を覚える時が来たか」
「えりなのいつも通りって何」
いつも通りって言われるとわからなくなるんだよね。
でも、そっか普通でいいのか
何も考えなければいいんだ。
みんながどうなろうと、私の大切な仲間に変わりないわけだし。
「ありがと、修造」
「おう」
「ちゅーしてあげよっか」
「おーそら太っ腹なこって」
「ふふ」
ありがとうの意味を込めてちゅーってしてあげると修造は嬉しそうに笑って抱き締めてくれた。
変わらず一緒にいよう、一緒に話そう、一緒に遊ぼう。
みんなは私の大好きな友達だから。
次は、体育祭!!
紫色の完全覚醒
(修造何出るの?)
(去年と一緒)