Mr.Wonder
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全国中学校バスケットボール大会
通称『全中』
毎年8月に行われ高校のインターハイに相当する中学バスケ最高のタイトル
大会日程は開会式を除くと3日間
9ブロックにわけられた地域予選を勝ち上がった23校+開催都道府県1校、計24校が出場
形式はまず3校1グループの8グループを作り、予選リーグ
各上位2校が決勝トーナメント進出
その決勝トーナメントを最後まで勝ち進んだ1校が優勝となる
そしてそれらを消化するためには1日2試合をこなさなければならない
3日間で6試合
その過酷な戦いを最後まで生き残った1校のみが
───中学最強を名乗ることが許される
『それではこれより全国中学校バスケットボール大会を開催します』
それが今日から始まる──
「キミたちが噂の美人マネージャーだね?!少しいいかな?!」
「いいですよー」
「え?!私?!」
「キミがミス帝光の夢咲えりなちゃんだね?!」
「そーでーす」
「全国のファンに一言どうぞ!」
「……はい?」
全国のファンに一言どうぞ?
ファン?誰の?
にじむーたちは凄い人気あるから非公式のファンクラブがあるんだって聞いたコトがある。
けど、私たちのファンなんて聞いたコトが…
「桃井さああああん!!夢咲さあああああん!!」
「嘘?!これ、私たちの声援だよえりなちゃん!」
おいおい、勘弁してよ。
私たちは普通のマネージャーですけど…。
客席から男の子たち声援が聞こえる。それは間違いなく私たちに対する声援で、動揺した。
助けを求めようと征ちゃんたちの方を見れば私たち同様取材陣に囲まれている。どうしようか…
「えりな」
私の肩を誰かが寄せた。
「にじむー…」
「次の試合のコトで相談してぇことがある。」
「え、あ…うん」
助けてくれたのかな…
「桃井はこの間頼んだ奴を持って来てくれ」
「は、はい!」
「行くぞ」
そのまま会場を出て行こうとすると取材陣が逃がさないとでも言うように囲んで来た。
「2人は仲いいね!付き合ってるの?!」
「どうして主将を辞めちゃったのかな!」
「今回の意気込みを教えて!」
質問責めとはまさにこのことだ。
「今はこのメンバーで優勝することしか頭にありません。
──そこを退いて下さい。」
ゾクッ
めっちゃ怒ってるんだけど…こわ…。取材陣もビクっと肩を震わせたら素直にどっか行ったし…。
今度こそ会場の外に出るとやっと手を話してくれた。
「にじむー…怒ってるの?」
「あ?別に怒ってねーよ」
いやいやいや。
「ただ、お前が他の野郎に見られるのが嫌だって思っただけ」
「男子バスケ部じゃん」
「それは仕方ねぇだろ。ンだよファンって、ありえねぇ」
「それは思った」
「ま、お前可愛いしいても可笑しくねぇとは思うがな」
「ふへへ、てんきゅー」
「気持ち悪ぃ恥ずかしがり方すんなよ」
「うるさいなー!」
さぁああっと心地よい風が通り抜けた。
───にじむーの顔つきも変わった
「……ところで、青峰のことだが」
「まだ心配してんの?」
大輝は完全に覚醒した。
この前の試合の時大輝はありえない角度からシュートを放つようになった。それは前からだったけど危なっかしいのにキレがあるあの大輝のフォーム。
それで少し元気のなかった大輝に喝を入れたのは、他の誰でもないテツくんだった。
それでもまだ懸念すべき所は残っている。
にじむーが心配するのもわかる。そしてその心配がすぐに現実となることも私は知っている。
今私が仮に何かを言って未来を変えることもできるかもしれないけど、あえてほっといている。それが最善だと私が決めているから。
私ならにじむーの不安を拭ってあげることができるかもしれないそれでも私はしない。
「大丈夫。思春期の男の子ってちょっと患ってっからさー!すぐ卒業できるって!」
「なんだそれ…」
そう言うしかなかった。
「…えりなが大丈夫だっつーなら大丈夫だな」
「…うん」
心底信頼してくれているにじむーは
来るべき日にすべてを知っていた私を知って
どうするのだろうか。
私を責める?
私を怒る?
嫌いになっちゃうかな。
それでも私は、
すべてを受け入れてみせるよ。
「えりな…?」
でも、気付いている。
それが出来るのは修造がいるからだと。
私は、彼を失うのが怖い。
彼がいないと、私は壊れてしまう。
「大丈夫だ。俺はずっとえりなの側にいるから」
虹色と懸念
(私は、彼を許せないかもしれない)