Mr.Wonder

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@えりな 暇ーかまちょー

@虹村 @えりな えりな。
@えりな @虹村 お?何?かまちょしてくれんの?
@虹村 @えりな 今からえりなん家行ってもいいか?
@えりな @虹村 んーいいけど。大丈夫?もう9時だよ。家の人とか…
@虹村 @えりな 気にすんな。すぐ行く
@えりな @虹村 …うい


っていうTwitterをしたのは15分くらい前の話だった。最近元気ないなって思ってたけど、どうしたんだろう。こんなにじむーは初めてだった。

とりあえずにじむーがいつ来てもいいように色々用意する。お湯沸かして、今来るって事は泊まって行くだろうし…


ピンポーン


インターホンが鳴って下のロビーの鍵を開けてあげるとすぐに私の部屋まで来た。


「いらっしゃい、にじむー」

「…急に悪ぃな」

「んーん、どうした?」

「来い」

「えっ…」


腕をグイグイ引っ張って私の部屋に入ればベッドに押し倒してぎゅうっと抱き付いて来ただけで何もして来ない。


「ん?んんん?どうしたの?」

「甘えたいだけだ、黙って抱きしめられてろ。」

「…うん。」


横にゴロンと寝転んで私を自分の胸へと収める。その後は首筋にキスをしたり髪を弄ったりと色々するけど何も言わない。


「……ねぇ」

「あ?」

「………」

「どした?」


そう言う声が泣きたくなるくらい優しくて、胸が締め付けられた。

愛しいとかそういうのじゃなくて、自虐的な感じがして苦しいって言った方が正しい。


「………」

「…えりな?」


優しく髪を撫でて額に口付けてくれても、何か違う。

優しいのは好き、だけどこんなのはらしくないよ。もっと強引なのがいい。…修造はそういう人じゃない。


「……修造さ」

「ん?」

「………」


言いたくない、認められたらどうしたらいいかわからなくなるから。

でも、


「……主将、辞める気でしょ」

「……な、んで…」


やっぱり。

そろそろかなーって思ってた。修造の様子も可笑しかったし、ショーゴくんが部活を辞めてしまって…


「…それは知ってたのか?」

「…違うよ。見てたらわかるの、」

「そう、か…。」

「……どうして、辞めるの?」

「親父がさ、危ねぇんだ。そんなんじゃ……」

「違うよ、どうして嘘をつくの?自分が主将を辞めることをお父様のせいにしちゃいけない。」

「……っ…」

「……監督にそう言うのはいいよ、でも、私にだけには本当のこと…教えて?」


修造は私を自分の胸から離すと今度は私の胸に顔を埋めた。少しくすぐったいけど、修造が甘えてくれてるのだと思うと嬉しくて頭を優しく撫でた。


「……灰崎さ」

「ん?」

「辞めさせちまっただろ」

「…それは修造のせいじゃないじゃん」

「…赤司を止められなかった」

「………え?」

「赤司が灰崎に辞めるように言ったのは知ってる。なのに…俺は止められなかった。」


知ってたの?
漫画では知らない感じだったのに…。それにテツくんにも結構キツイこと言ってたから…。


「…それに、最近次々と辞めて行ってるのも…赤司がそう促してるらしい。言われて辞めるならそれまでなんだと思う…でもな」

「……」

「1軍だろうが2軍だろうが3軍だろうが、バスケ部にいる奴らは全員俺の部員だ。」

「………」

「…俺には出来ねぇよ、好きでやってるバスケを…成長出来ねぇからって無理矢理辞めさせるなんて。」

「……うん」

「…それをやっちまう赤司は主将に向いてねぇかもしれねぇ。でも、俺がいる間に少しでも赤司が主将になれるように…見守りたいと思ってる。」

「……うん」

「…そんで、本当の主将になった赤司からパスを貰いたい。」

「…そうだね」


苦しいくらいに抱きついてくる修造の頭を撫でることしか出来ない。何かを言えば、未来は変わるかもしれない。

けど、それだと彼らは成長しない。


「……えりな」

「ん?」

「灰崎は、俺を怨むと思うか?」

「思わないよ」

「俺が居場所を奪ったんだぞ…」

「…大丈夫、ショーゴくんの居場所はまだあるから。」

「……そうか、それなら…いい。」

「……」


正直今の帝光で主将としてやっていけるのは、修造しかいない。

実力はキセキより劣るかもしれない。けれどあのむっくんすら従うのだから、虹村修造の主将としてのカリスマ性で言えば随一とも言える。

……征ちゃんからはカリスマ性は感じられない。部内を崩壊させるなとしか思えなかった。

主将をしゅしょうやキャプテンの他になんと読む?と聞けばきっと修造ならリーダーと言って、征ちゃんはボスと答えるだろう。

リーダーは自分も一緒に全員の先頭に立って頑張る人、ボスは上で命令して自分は傍観してることが多い人。例えの話ですごく極端だけどね、征ちゃんが何もしないってのは言い過ぎだし。

もっと言えば跡部景吾のように「俺様について来い!!」って言ってみんなの光になれる人がリーダーでありカリスマ性のある人。そういう人が主将に向いているんだと思う。

征ちゃんの場合そういうタイプじゃない、はたからみれば…利害の一致でプレイしているだけ。

もし征ちゃんがリーダーになれたら、きっとチームはいい意味で化けるだろうに。

私はそんな征ちゃんを見たい。

それまでにどれだけ征ちゃんを苦しめたとしても。


「修造」

「…ん?」

「……お疲れ様でした、後は私たち2年に任せて」

「…おう」


安心は出来ないと思う、心配しかしてないし、不安だと思う。

そして、その不安は現実になる。

それが修造を苦しめるのも知ってる。それでも私は、伝統を捨ててでも彼らには成長して欲しいから。


「…ご、めんね…」

「馬鹿、泣くなよ…」


修造の前で泣くのは初めてだね、あたふたしてる修造は可愛い。


慰めようとしてキスしてくれるけど





───そこから、悔しさしか流れて来ないから涙が止まらないの





虹色が甘えたい時
(俺はこんなことでしか、彼奴らを成長させてやれない)
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