Mr.Wonder
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「…涼太」
「ん？どうしたンスか？」
「はい、これ」
「何これ」
「期末テストに出そうな所だけピックアップしておいた。解説とか出来るだけわかりやすくしてるつもりだから、お願いだから補習やめて」
「えりなっち…！ありがとう！」
っていう会話を涼太としたのは2週間前のことだった。因みに大輝にも同じようなのを渡したが、やったのかどうかはわからない。
涼太は時間が許す限り放課後に教えたりしたけど、大輝は1軍だし、そんなことは出来なかった。
まぁ、これをクリア出来ないと全中に出れないし、やってくると思うんだけど…
もう当日だしどうこうできないけどさ
「えりなちゃん、おはようございます」
「あ、おはよう。」
「どうかしましたか？」
「涼太と大輝、大丈夫かなーって」
「ああ、青峰くんはどうかしりませんが、黄瀬くんの理解力のなさは最早尊敬すら出来ますからね」
「それな」
親友として否定してやりたい所だけれど、これだけは庇うことは出来ない、許して。
「えりなっちー」
「涼太おはよう」
「今日はバッチリ点数採れる気がするッス！」
「…どうしよう、この根拠のない自信が勉強してない時に起こる 『何故か出来る気がする症候群』にしか聞こえないから不安が私を襲う」
「えりなっち、ネーミングセンスねぇー…」
「自覚してるから黙れ！そしてギリギリまで勉強して！」
「はーい」
ネーミングセンスはないけれど、誰もがきっとこの病気にかかったことあるでしょ、否定はさせない。
「夢咲！」
「…え、何事」
「……おはよう、夢咲」
「お、おぉ…おはよう、緑間くん」
目の下に軽くクマを作ってドカドカと教室に入ってきたのは緑間くん。その手にあるものはラッキーアイテムですか？
「今回は俺が勝たせてもらう。今日の俺の運勢は1位、しかもラッキーアイテムはきちんと持って来た。負けるはずがないのだよ」
「…でもそのクマの服に、『I♡ノー勉』って書いてるけど……」
「ラッキーアイテムなのだから関係ないのだよ」
I♡ノー勉はダメだろう。
なんだよこのクマ、クマについてる札をみると『I♡ノー勉クマシリーズ 全5種類』って書いてある。
どんなシリーズだよ…
「…じゃあな、お互いベストを尽くすのだよ」
「…私は緑間くんが超心配」
「自分のことだけ考えてろ！」
「う、うす」
ていうか正直、順位とかどうでもいい。でもまぁ、中学生に負けるのはちょっと癪かな。
「おら、席につけー。テスト始めるぞー」
こうして、期末テストが始まった…。
もう疲れた、帰りたい。
「終わったああああああ！！！」
「うるせぇよ！」
「いった！」
あれから数日たって、テストが終わった。涼太も大輝も手応えがあったようで改めてお礼を言われてしまった、照れ臭い。
そして今日からは全中に向けて練習が始まろうとしていた。のでので、体を動かすために(ストレス発散)ボールを持って暴れてたらにじむーに捕まって殴られた。本当容赦ねぇな。
「珍しいなボール持つなんて」
「んーやってみようかなって」
「ふーん…やってみろよ、スリーポイントラインから」
「おーう」
「精々笑わせてくれ」
「酷いな！」
スリーポイントラインに立ってシュートモーションに入る。見よう見まねだ、にじむーの言うとおり笑われる結果になるのはわかってる。
「よっと」
私の手から放たれたボールは綺麗にゴールへと飛んで行った。
「…入る」
誰かが呟いた気がした…
「…は、お前まじかよ」
信じられなかった、ボールは綺麗にリングにも当たらずに入った。
「えりちんすご〜、経験者だったの〜？」
「むっくん…いや、授業くらいでしかバスケはしたことないよ。まぐれまぐれ」
「…ふーん？嘘でしょ」
「え？」
「そうだな、今のフォームは初心者じゃねぇ。経験者そのものだった」
「は、い…？」
「そうそ〜、ミドチンみたいに綺麗だったよ？」
「え、だって…緑間くんの見よう見まねだし…」
「…へぇ」
「ま、いーや。えりちんはマネージャーだし。俺着替えてくる〜」
「うん…」
にじむーもむっくんも険しい顔をしたまま部室へと姿を消した。
…まさ、かね…
もう1度ボールを持って、同じようにボールを投げた。
けれど、ボールはゴールには入らなかった。
「ほら、まぐれ」
これで最強設定とかだったらどうしようかと思ったけど、違ったみたい。よかった。前の世界になかった設定をこっちで付け足されるのだけは勘弁してくれ。それは最早私じゃない。
その後は普通にみんなは練習をして、私はサポートをして、いつも通り練習は終わった。
「……えっと」
「何だい？」
「何で赤司くんが私を送ってるの？」
「俺が送りたいと思ったからだが」
「ソウデスカ」
「それと、仲良くなろうと思ってね」
部活が終わった後、帰ろうとしたら赤司くんに呼び止められ何事かと思ったら『送る』と言われた。
家どこなんですかね、一緒に帰ったことなかったから多分逆だと思うんだけど…
「そうだ、えりな」
「ん？」
「先月のパーティーの話は覚えているかな」
「あ、うん」
「全中が終わったら俺の家でひらこうと思う、どうだい？」
「行く行く！」
すっかり忘れてたけど、ジュリエットをこなしたらひらいてくれるって言っていた。
突然の主演交代だったから、私がセリフ覚えるのにひいひい言っていたところ手伝ってくれた。その上にパーティーというご褒美までくれるという。それのおかげで私は無事にロミオとジュリエットをやり遂げることが出来たってわけ。
にしても、全中の後か…
「こちらで桃井さんとえりなのドレスを用意しておこう。」
「いいの？」
「いつも頑張っているからご褒美だよ」
「ありがとう！」
赤司財閥が用意するドレスかー…きっと素敵なんだろう。期待が膨らんで行く。
「あ、ここ、私のマンション！送ってくれてありがと、いつでも遊びに来てね！」
「ここか…。ああ、わかったよ。」
「じゃあまた、明日部活で」
「ちょっと待って」
「ん？」
「俺のことも名前で呼んでくれないか」
「え？」
「仲良くなりたいと言っただろう？」
「…じゃあ征ちゃんね！」
「…………まぁ、いいだろう…」
すっげぇしぶしぶだなおい。
嫌なら嫌でいいんだよ？無理すんな！
「…おやすみ、えりな。いい夢を」
「おやすみ、征ちゃん。あなたもね」
そう言えば優しく笑ったから案外嫌じゃないのかもしれない。可愛いやつだなこのやろう。
いつものようにマンションに入って部屋に戻るつもりだった。
「…な、にこれ…」
私の部屋のドアノブに紙袋がぶら下がっていた。その紙袋に付箋がついていて、綺麗な字で『えりなへ』と書かれていた。
この字に見覚えがない。ストーカーではないだろう、マンションの住人というのも考えにくい。一体誰がこんなものを…
「……え」
中を見て、私は今までの疑問を愚問だと思った。
友達でもない、マンションの住人でもない、もちろんストーカーでもない。
送り主は…私をここ送った奴。
だって、中身は
「黒子のバスケ…23、24、25巻…」
7色と期末テストと急展開
(…一体何のつもりなの)
第1章 end