Mr.Wonder

□08
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「おーえりな」

「にっじっむー!」

「うおっ‥!」


はい、朝練でございます。
どれくらい早く出たらいいのかわからなくて、とりあえず早く行けば、何と1人でした。これはどうしたものか‥と考えていたらにじむーが来てくれたのでとりあえず抱きついておいた。


「おはよ、にじむー!カップケーキは食べてくれた?」

「はよ、おー食った。美味かった、ありがとな」


昨日にじむーにもカップケーキをあげていた。何かお世話になってるしね、お礼として。

にじむーは私に甘いと思う。頭を鷲掴みにするけれど、こういう時はちゃんと抱き締め返してくれるし。


「そうだ、お前何か嫌がらせされたら言えよ」

「おーおけおけ」

「昨日みてぇに勝手に行動すんなよ!」

「わかったってばー!」

「ならよし、じゃあ職員室に行って予定表貰って来てくれ。」

「らじゃ!」


なでなでと私の頭を撫でれば部室へと入って行った。鍵はにじむー担当か。まぁいいや、職員室行こうっと。


「嫌がらせなぁ‥‥」


これって嫌がらせなのかな‥。
体育館においてあった私の靴の中に、画鋲。


「ぶはっ、小学生かよ!」


手を傷つけないように画鋲を取り出してゴミ箱へと捨てれば職員室へ向かう。

職員室でプリントを受け取って体育館へ戻ろうとするまでは何もなかった。早く帰らないとにじむーに怒られるから早くして欲しいんだけどなー


「何か用?」

「何か用?じゃねぇよ」


昨日のギャラリーたちが目の前に立ちはだかった。えーもう面倒臭い。

体育館まではまだある。叫んだところで職員室にいる先生にも、体育館にいるにじむーたちにも声は届かないはずだ。馬鹿なりに考えているらしい。馬鹿であることには変わりないが。


「ボール持ってなければ丸腰だし勝てると思ってんの?」

「思ってるけど、一軍もいないみたいだしね」


舐められたもんね、中学生に。

スタメンだけのマネージャーがただのマネージャーなわけないじゃん、それをわかってて赤司くんは私をマネージャーにしたとか思わないのかな。


「思う存分殴らせてもらうわ。こんな早朝、誰も来ないしね‥!」


バキッ


「っ‥‥!」


いやいやいや、なんで殴られてんの私?グーパンはダメでしょう。昨日は私威嚇しかしてないじゃん、やだやだ。最近の子は手が出やすすぎじゃない?にじむーもだけど!

にじむーに止められてるし、それにもう私バスケ部だから手は出せないしなぁどーすっかなぁ


「怖くて声もでねーのか、ざまー」


その声イライラすっからとりあえず黙っててくれないかな。

あーどうしよ、このまま逃げたら頬腫れてるし口切れてるしでまた迷惑かけそうだな‥


「おらっ!」


ドスっ!


「う‥!」


殴られた拍子に倒れていればそのまま鳩尾を蹴られた。くっそう、鳩尾はやめろ鳩尾は。そこは鍛えられないんだぞ。







「おい、オメーら何やってんだよ。随分楽しそうじゃねぇか。俺も混ぜてくれよ‥」






こんなところに人はまだ来ないと思った。にじむー?いや違う、キセキの声でもない‥誰?

影から出てきた彼はとても綺麗な灰色の髪を持っていた。

まさか‥彼が‥


「灰崎祥吾‥!丁度良かった、こいつ調子に乗ってるからお仕置きしてたのよ、一緒にどう?」

「調子に、ねェ‥」


やっぱり、この子が灰崎‥。
昨日いたような気がする‥途中から‥。

鋭い目つきで睨んでくる灰崎くん、助けてくれるのかくれないのか‥どっち?


ドンっ!


「きゃ‥な、なによ‥!」


灰崎くんの名前を呼んだ女の子が灰崎くんに腕を引かれて所謂壁ドンをされた。おおお‥何すんだコラ。ラブコメでもはじまるのか‥おおお。


「‥‥誰の許可を得てこいつにちょっかいかけてんだよ?」

「‥‥‥え?」

「こいつはバスケ部のモンだ。しかも一軍のなァ。テメーらが手ェ出していい女じゃねぇんだよ!」


ガン!‥パラ‥


「ひ‥っ‥ぁ‥」


何、灰崎くん何を‥。
突然灰崎くんは女の子の顔面スレスレの壁を殴り、壁にヒビが入った。

何‥して‥


「‥何をしてるの?灰崎くん」

「あぁ?」


女の子はズルズルとへたり込む、足は震え、顔は恐怖に支配されている。それほどに今の拳に迷いも手加減も感じられなかった。


「‥ダメだよ、バスケしてるのに乱暴に扱っちゃ。」


ようやく私は立ち上がって、彼の手を取る。ゴツゴツしていて、大きな手。喧嘩も良くしているんだと思う。それでも‥この手は‥優しい。酷く、優しい。


「‥‥行こう、手当てしなきゃ。」

「いーよ、手当てなんて」

「それだと私の気持ちがすまないでしょーが。大人しく手当てされて!」

「は?わかったよ‥」


少し困った顔もする灰崎くん。

そのまま手を引いて体育館へと戻ろうと歩いた時だった、


「覚えて‥‥なさ、い‥」


そう恐怖に支配されつつ彼女はそう言った。


「忘れておくから、アンタも忘れなさい。」






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