Type A
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「…確信を得る為に、三条ゆかの担当の先生の日記を読んで行きますねー」
かすみの日記の最後に「三条ゆかは何もしていない」と書き残してくれた。これは大きなヒントになる。今思えば確かにそうだ。私がわからないといった「信じているからこそ、起きるキセキ」もこれでピースがうまる。
でもそれをみんなの前で話すには、三条ゆかの先生の日記を読む必要がある。
7月3日、私は山城第二小学校始まって以来天才と言われている女の子、三条ゆかちゃんの担当になった。それまでは普通のクラスで普通に授業を受けていたけれど、彼女は頭が良すぎて、子供らしさが全くなく、クラスではのけ者にされ、父兄の方からも苦情が来ていたようだ。ゆかちゃん程の頭の良さなら日本のどの小学校に行っても同じだろう。そこで3年2組に所属しつつ、養護学級にある空き教室で個人授業をすることになった。私なんかで大丈夫なのかとても不安だ。でも頑張るしかない。それにしても、そんな扱いを自分の子供が受けているのにゆかちゃんのご両親は何も言ってこない。何故かしら?
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ゆかちゃんのご両親は日本でも有数な資産家らしい。なら、なぜゆかちゃんをもっといい小学校へ進学させなかったのかしら。山城第二小学校はただの公立なのに。それにゆかちゃん程の頭脳の持ち主ならどんなに頭のいい小学校のお受験でもクリア出来るはず、ご両親は一体何をお考えなのかしら。
ゆかちゃんと少しずつだけれど仲良くなってきた。子供話してるっていうより大人と話しているのとあまり変わらないけれどそんなゆかちゃんとの話が好きだったりする。
その時に聞いたのだけれど、ゆかちゃんにはお兄さんがいるらしい。そのお兄さんが三条家の跡を継ぐのだと教えてくれた。そのお兄さんは○○大学附属小学校へ通っているらしい。とても有名な頭のいい学校だ。
でもお兄さんは頭が良くなくて、きっと三条家を継げないと言われていると聞いた。すべてゆかちゃんに奪われたのだと。
それでも三条家を継ぐのは長男である彼。だからご両親はとても彼に愛を注ぎ、教育熱心であるらしい。ゆかちゃんは出来が良すぎる故に、ご両親に可愛がられていないようだ。ゆかちゃんに罪はないのに……
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本当にゆかちゃんは天才だと思う。どんな問題も教えなくても解いてしまうもの。それを辛いと思っているのかは知らない。もし苦しんでいるとするなら、小学校の間は少なくとも苦しむだろう。可哀想だと思う。けれどゆかちゃんならきっと…
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ゆかちゃんのお兄さんが亡くなった。それなのにゆかちゃんはいつも通りどころか、いつもより笑うようになった。…これでゆかちゃんが次期当主となるのかな…
ゆかちゃんの家に養子が来たらしい。義理の兄が出来たという事。…ご両親は次期当主を三条家の血が流れていなければ誰の子かもわからない全くの赤の他人を選んだ。これにはゆかちゃんも納得いかなかったようで、学校に来ては荒れていた。しかも、義理のお兄さん○○大学附属小学校に通う事になったらしい。裏口入学というやつだと聞いた。どうしてそこまでご両親はゆかちゃんを当主にしたくないのかしら…
ゆかちゃんは最近口癖のように「どうすれば認めてもらえるのかがわからない」と言っている。誰に、かなんてわかりきってる。ご両親だろう。扱いがあまりにも違いすぎる…。一度ご両親にお話を伺った方がいいのかしら…
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「どうすれば認めてもらえるのか」という点については言わなくなったが、最近は隣にある工場について聞かれる。どういう工場なのかとか、なんの工場でどれだけの人が働いているのかとか。安全性や危険性についても聞かれたわ。さすがに詳しく知らないから授業中に2人でパソコンを使って調べてみた。ゆかちゃんがなにをそんなに工場の事について知りたいのかはわからないが、見取り図を見て、ニヤリと笑ったことは見なかったことにしたい。
毎日毎日ゆかちゃんは、何かを考えているようだった。またお兄さんの事かと思って尋ねてみたら「あんなのどうでもいい」ときっぱりと言ってみせるので違和感を覚えた。ならばご両親のことを考えているのだろうか。やっぱり両親の愛と言うのはいまのゆかちゃんに一番必要なものだと私も思う。…愛してあげてほしい。
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私は今月いっぱいで寿退社をすることになった。勿論それだけが理由なのではなく、妊娠もしたから。それをゆかちゃんに報告すると、「裏切り者!!」と言って逃げられてしまった。どうしよう。
遂に退社する日になった。最後にゆかちゃんとちゃんと話をしたかったが、あれからゆかちゃんは学校に来ていない…。ごめんなさい。本当はゆかちゃんが小学校を卒業するまで一緒にいたかったけれどどうせ、産休や育児休暇を取らなければいけなくなる…。今が潮時なんだよ…。…ゆかちゃんが怖いとか、嫌いだとか、そんなんじゃないの…、それだけはわかってほしい。
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あの工場が、高速道路と山城第二小学校を巻き添えにして爆発したというニュースを聞いて、頭の中が真っ白になった。
それと同時に、ゆかちゃんがやったのではないかという、疑いがでた。
でも、ゆかちゃんは自分の頭脳と自分を認めてほしかっただけのはず…自分まで死ぬようなことをするとは思えない…。
明日、ゆかちゃんの家に行こう。
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ご両親とお話しして確信を得た。あの事故は事故なんかじゃない。ゆかちゃんがずっと求めていたものを掴み取るために起こした、事件。
私はゆかちゃんを止めることは出来なかったということになる。
ぞっとした。だからこそ、この事件のことを調べないわけにはいかない。ゆかちゃんが何をしてこうなってしまったのか私は生き残ったものとして知る必要がある。
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ゆかちゃんは1人殺し損ねた。
そんなの彼女が許すはずがない。
ゆかちゃんは
今でも夢咲えりなちゃんの後ろにいる。
『死ね』
三条ゆか
(私の背中にぴったりとくっついているのは、誰?)