Type A

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「あれ…えりなは?!」


幼少期の真山かすみがパチンと指を鳴らせばえりなと真山かすみが消えた。それに、さっきいた場所でもない。今いる場所は職員室だが、世界が違う。


「飛ばされた」

「?花宮?」

「俺らがAの異世界に飛ばされた。えりなはBの異世界にひとりきりだ」

「は?」

「えりなが最初にいた世界…高尾たちがいる世界に追い出されたんだよ!ちったぁ考えろ!バァカ!」


よく考えれば真山かすみは俺らとは言わなかった。えりな鬼ごっこをすると言っていた。ならば俺らはいらない存在、異世界を消せるなら俺らを移動させるなんてことは容易いはずなんだ。この世界に来てコントロールも上手くなってるってことになる。

…なんで、止めなかった?


「えりなはあの世界に1人…っ…」

「ど、どうすんの?!えりなが死んじゃうかしれないじゃん!」

「どうも出来ねぇよ!とりあえず高尾たちがいるはずだ!探すぞ!」


合流すれば新しい情報が手に入ってえりなを助けることが出来るかもしれない。彼奴は強そうに見えてそこまで強くない。今頃震えているかもしれねぇ…

なんでなんで、ちゃんと止めなかったんだ…っ


「!!おい、あれ!」


福井が職員室から出て行って、叫部。何起きてるのかと思って、俺たちも職員室の外へ出ると天辺の階段に、ゾンビような奴らがうじゃうじゃいた。

そいつらは俺らに見向きもしないで、上へ上へ進む。


「…上に行くぞ」

「え?!危なくない?!」

「上に奴らがいる可能性が高ぇ!行くぞ!!」


大量に湧いているバケモノは殺せる筈だ。それも簡単にな。生きた人体模型も、大男も怪力ではあったが簡単に死んで行った。

他に頑丈なやつがいるとは考えにくい。


「襲ってくる可能性がある!迷わず殺せ!」

「わ、わかった!」


走って階段まで行くと相変わらず俺たちに見向きもしない。上に向かって走り抜けようとすると、ようやく振り向き始めたが動きが遅く簡単にすり抜けられた。


「グァ…ア…!」

「ちっ…邪魔なんだよ…!」


4階へと続く階段を登っていると前にいたバケモノが噛み付こうとしやがったから、横に避けて下につき落とせばグシャリと嫌な音をさせて潰れた。

そんなに高さはなかったはずだが…。思っていたより随分と脆いみてぇだな…


「レオ姉の声がする!!」

「…やっぱりいたか…」


後ろにいた葉山が実渕の声を聞き取って先に走って行く、俺には聞こえなかったな…なんつー耳してんだ、あいつ。


「赤司───!レオ姉───!!!」

「え…小太郎…?!」


4階の理科室の前には実渕たちがいて、バケモノと戦っていた。それにしても多過ぎだろ、何があったんだよ…?

それにあいつら、なんで理科室の前に集まってるんだ。こんなにいるなら理科室の中に入るなりして籠城する方がいいんじゃねぇのか。


「ァ…ア…!」

「ちぃっ…うじゃうじゃいすぎなんだようぜぇ!」


近くにいたバケモノ2体が俺に狙いを定めて襲いかかってくる。なんだ?奴らに近づくに連れて襲いかかるようになってきているが…、何だか奴らは理科室を守ってるかのように見える…。誰かいるのか…?

倒しながら奴らの元に行くと赤司が珍しく状況を飲み込めずにいた。レアだな、その顔。

これだけうじゃうじゃバケモノがいたら中々進めねぇな。


「花宮さん、何があったか話して貰えますか」

「あ゙ぁ?今はそれどころじゃねぇだろ!」


なんで赤司はそんな余裕ぶっこいてんだよ。お前だってそれなりに襲われてんのによ…


「福ちん!えりちんは?夢咲えりなって子いなかった?」

「さっきまでえりなと一緒にいた!!でも、今あいつは…俺らがいた世界に1人取り残されっちまった……!!」

「………なんだって…?」


福井がある程度えりなが今置かれている状況について説明をすると全員が一瞬で青ざめた。ケッサクだな、本当。


「何それ、えりちん置いてきたって事?!」

「あーもう!俺だって花宮だってどうにも出来なかったんだよ!とりあえず、えりなが頑張ってんだ俺らも…!!」

「意味わかんねーし!わかるように説明してよ!」

「お前ら、真山かすみは知ってるな?」

「ええ、知ってるわよ。黄瀬くんのこと好きな子でしょう?」

「ああ…幼少期の真山かすみが現れて、えりなに勝負を申し込んだ」

「勝負ぅ?」


青峰が勝負という言葉に反応をして、こちらを向く。前見ろよ、怪我するぞ。


「どんな勝負なんだよ」

「1時間、真山かすみから逃げ切ればいいという単純なゲーム…。えりなが勝てば、えりなが今いる異世界の解除とすべての日記が手に入る」

「…負ければどうなるんだい?」


氷室がそう聞いてきたが何と無く察しはついているのだろう、俺から発せられる言葉が予想通りでないことを祈っているっつー顔だ。

残念だが、合ってんじゃねーの


「…えりなの死だ」

「っ…なんだよそれ!意味わかんねーし!!なんでえりちんはそんな…っていうかなんで福ちんたち止めなかったんだよ!」

「小太郎アンタもよ!!」

「止めたよ?!けど!えりながこの方法を選ぶって!私を信じてって…!!」

「それでも止めるべきだったわ!!1人で1時間なんて無理よ…!」

「やめないか!彼らを責めたってどうにもならないだろう!」

「じゃあ室ちんはえりちんが死んでもいいっていうの?!」

「そうは言ってないだろ!!過ぎたことを責めても仕方ないじゃないか!」


全員が口々に言い始め、俺はそれを黙ってバケモノを倒しつつ聞いている。

最後まで止めるべきだった…それは俺が悪い。


「うるさいぞ、お前ら」


凛とした声が響いた。


「花宮さん、えりながその方法を選ぶと止めても言ったんですね。」

「…ああ」

「……そうか」


1度目を瞑り短いため息をつく。


『あ゙…ァ…!』

「征ちゃん!!」

「えりなと合流したら、説教だな」


グシャと嫌な音と、周辺に血が散らばる。

赤司が目を瞑った瞬間を狙ってバケモノが噛み付こうとし実渕が声をあげたが、赤司は目を瞑ったままバケモノの顔面を掴み、握り潰した。

……えりなは生きて帰ってきても赤司によって殺されるかもしんねぇな…


「お前らも、過ぎた事で喧嘩をするな。今は目の前のバケモノを倒すことに専念しろ。…えりなと合流したらみんなで叱ればいい」


そう言うと全員の表情が柔らかくなった。赤司は案外えりなを信用しているらしい。合流したら、なんてな。逃げ切ることを信じてやがる。


「今理科室では、涼太と高尾くんが消された真山かすみとえりなの偽物の記憶を取り戻そうと痛みと戦っている。」

「な、それなら!」

「もし早く思い出してくれれば異世界は解除され、えりなを助けに行ける。そのためにはバケモノを理科室に入れられない。今僕たちがやるべきことは、バケモノを倒す事だけだ。」


なるほど、ロジックエラーが発生しそうだからバケモノたちが邪魔をしに来てんのか…


「いいか、えりなを含めた全員で元の世界に帰る!油断するな、一瞬の油断が命取りになる。」

「おおー!」

「……さぁ、勝つよ」





今やるべき事
(いいなー…)
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