Type A

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「もう1人の夢咲えりなって…何なんだ」

「職員室に自分もえりななんだって名乗る女の子がいたんだよね!すっげー似てた!でもでも、話し方がギャルっぽかった」

「ドッペルゲンガーか?」

「いや、ドッペルゲンガーじゃねぇな」

「は?ドッペルゲンガーじゃねぇってどういう意味だよ」

「その話も後だ、読め」


伊月さんも福井さんももちろん私も頭の上に?を浮かべる。確かにあれは私のドッペルゲンガーってわけじゃなさそうだ。でも何者かはわからない。

マコちゃんは一体どこまでわかっているのだろうか。…今は、マコちゃんがいることで安心感を覚えている。私だけで考えなくていい、もう1人じゃないんだ。そう思うだけでひどく安心できた。もう一度高尾くんに会いたい、そのためには私も情報を集めなきゃ。そう思って、日記に目を通す。



…11月14日(1枚目)
今日であの子の誕生日まで後1週間だから、今日からメモみたいな日記を書こうと思う!メモって大事よね!あープレゼントどうしよう…明日聞いてみようっと!


…11月15日(2枚目)
今日プレゼント何がいいか聞こうと思って部活に行くあの子を追ったら振り向いてくれたぁ!やっぱあの目はすごーい!それに感動しちゃって聞くの忘れちゃった…てへ。彼はすごく人気だからきっとたくさんのプレゼントをもらうんだろうなあ。被らないようにだけしなくっちゃ!


…11月16日(3枚目)
昨日聞けなかったから今日はちゃんと聞こうと思った。なのにあの女が…あの子の隣にいたから聞けなかった。殺す…殺してやりたい。なんであの子の隣にいるのが私じゃなくてあの女なの。私の方が可愛いし何でもできるのにどうして?


…11月17日(4枚目)
あの女を町で見かけた。うちにいる緑色と有名な黄色と一緒にいた。あの子だけじゃ足りないってこと?何それ。意味が分からない。殺してやりたい。私はこんなにも彼が好きなのに……苦しい、苦しい…だいすきなの、本当に…。振り向いてよ、私じゃダメなの?


…11月18日(5枚目)
殺したい、こんなにも殺したいのに殺せない。だって殺してしまえばあの子の近くにいられなくなってしまう。どうすればいいのどううればいいのどうしようどうしよう。あの子に……聞いてみようそしたら何かいい方法があるかもしれない。明日は蜘蛛の学校に行こう。


「…えっと……?」


もう1人の私が何を言ってるのかさっぱりわからない。緑色と黄色?あの目って何、蜘蛛の学校って何?!めだかの学校的な何かですか。うーん、なんでこうはっきりと書いてないんだろう?自分しか読まないんだからもっと名前とかバンバン出て来てもいいんじゃないのって思うんだけど。なんだか、誰かに意図的に改編されたかのような内容だった。


「夢咲さんは高校バスケに関わってるの?」

「……い、いえ…」


伊月さんにバスケ部と関わりがあるのかと聞かれてちょっと驚いてしまった。何かわかったのだろうか?というより、私以外はこの日記についてすべてとは言わなくてもなんとなくはわかっているようだ。なんだか悲しい。

次元が違うんで、関われない。とは言わない。みんな混乱させたくなくて言わないようにはしているけれど、この情報が必要なのかな。必要であるならば話した方が良いのかもしれないけれど。


「じゃあわからないかもな」


え、じゃあつまり…。黒バスクラスタならわかるってことですか?伊月さん、ハブらないで説明下さい。私は全然知らないから何もわからない…


「これ、高尾のことだよ」

「え、高尾くん?!」

「後ろから来て見えるのは、鷹の目があるから。というか11月14日の1週間後は11月21日…つまり、高尾の誕生日なんだよ」

「……ホーク、アイ?」

「鷹の目と書いてホークアイ。視野が広いのはもちろん、コートを上から見下ろしてるような視点で理解する事が出来る能力ってとこだよ。実際に上から見えてるわけじゃなくて、頭の中で上から見下ろしてるようなイメージを、映像として描き捉えることができる特異な才能なんだ。俺にも同じ能力があるけど鷲の目と書いてイーグルアイ。でも高尾の方が能力的には上なんだけどな…」

「なるほど…だからあの時…」

「あの時?」

「頭の後ろに目があるような行動をとっていた時があって…」

「ああ、なるほど」


空間認識能力って奴か。サッカーでおなじこと出来る人がいるし、トンデモ設定ではないか。UFOキャッチャーは得意ですか?嘘です聞かないですよ。

びっくりしたよね……高尾くんが蜘蛛の学校なのかと。蜘蛛の学校って言い方が酷いよね、どうしたらそんな呼び方になってしまうの?


「続きだけど、緑色は緑間を、黄色は黄瀬をそれぞれ指してると思う。」

「蜘蛛の学校は?」

「俺の学校、霧崎第一のことだ」

「え、マコちゃんの学校、オカルト学校なの?」

「ぶっ殺すぞ!エリート学校だバァカ!」

「ご、ごめんなさい…」

「蜘蛛ってのは花宮のことだよ」

「……え…」

「距離置いてんじゃねぇよ!」

「痛いなぁって」

「ぶふぉ!」

「あっははは!マコちゃん嫌われたー!」

「黙れ!」


え、福井さんが吹いたんだけど。
だって蜘蛛がマコちゃんとか聞いてしまったら、ねぇ?距離置くしかないじゃん。蜘蛛普通に怖いよね?生態的にも、見た目的にも。家庭内で出るような小さいのなら別にいいんだけど。そういうことじゃないのか。


「で、なんでマコちゃんが蜘蛛?」

「蜘蛛の巣って呼ばれる作戦があんだよ…」

「うわ…」

「うわって何だよ?!」

「センス皆無すぎない…?今すぐやめた方がいいよ」

「いい加減にしろ!」

「ぶふぉ!」

「えりな最高っ!」


どうやったら策略が蜘蛛の巣って呼ばれるようになるの?何なのマコちゃん虐められてるの?普通に痛々しいよ…何それ…。

だから福井さんは吹くのやめてください。後、コタちゃんうるさい。ばしばし肩叩くのやめて?あなた怪力なのよ…わかってる?脱臼しかねないから今すぐやめてもらいたい。痛い。


「無理矢理話を戻すけど…。もう1人の私は、高尾くんが好きだとして…、私は関係ないよね」

「“あの女”ってお前の事じゃねぇのかよ?高尾はお前が好きで、もう1人のえりなは片思いだった、だからあいつはお前になりたかった。違うか?」

「うーん?私は関係ないんじゃないかな?」

「何で言い切れる。えりなは秀徳だろうが」


あ、そうだった。私は、秀徳に通ってるって設定だったな…。マコちゃんに言われていなければ私は忘れたままだった。こんなに頭のいいマコちゃんが近くにいるんだ、きっとバレる…けれど今は。

私はどうやってもみんなとは関われない。高尾くんに想いを寄せられることも、それに対し誰かに恨まれるようなこともないはずだ。


「高尾くんも黄瀬くんも緑間くんも、1度も話したことないの。友達でもなんでもない」

「そうか…」

「ふは、面白くなってきたな…。次はお前の話を聞かせろ。俺の推理はその後だ」





私の日記
(高尾くん…ねぇ、そうなんでしょう?)
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