番外編

□虹色とデート
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「おい、えりな」

「…なんでしょう」

「今度の日曜暇か?」

「……部活がないなら暇だけど」


あのドッジボール大会の後、ショーゴくんとにじむーには警戒をしている。だって人前でキスとかしようとしてきてだな…ショーゴくんは兎も角、にじむーはモテるしファンもいるしで学校では避けたいし何よりあの形で負けてしまって私はとても悔しかった。

まぁ、人のこと言えないこと、むっくんにしたけどさ。

それで部活中に日曜暇か?とか嫌な予感しかしないわけで…


「デート、するか」

「ふぁっ⁈」


デートと来たか、すっごく驚いたよ、とても驚いたよ。


「ちょっとー、主将がえりちんとデートとかやめてよ〜」

「うるせーよ、紫原!」

「え、何、えりな、虹村サンとデートすンの?」

「青峰、オメーも黙れ。」

「…デートって、その、デート?」

「どのデートだよ!お前の思ってるデートで合ってるよ!!」

「虹村サンが夢咲とデート…」

「へぇ、デートねぇ」

「テメーらデートデート言い過ぎなんだよ!ゲッシュタルト崩壊するわ!!えりなはいいから日曜に○○駅に10時!」

「お、おっけー」


こんな強引なデート初めてだわこのやろう。中学生っぽくていいと思うよ、お姉さんは!


「楽しみにしてる」


そう言えば部室へと姿を消した。

そう言えば、デートはこっちの世界に来てから初めてだな…。それがにじむーって、なんか笑ってしまう。デートなんて無いと思ってたから嬉しいってやつかな。

そうと決まれば服も新しいのにして靴も買って、デート行くぞー!


「にっじっむー!」

「の、わっ…テメー…」

「痛い痛い痛い頭グシャグシャになっちゃう!」

「…ん?えりな、お前…」


当日、精一杯のオシャレをして○○駅15分前に行けばもうすでににじむーはそこにいた。

逆ナンされてた、イケメンめ!
女の子たちから助けてあげようとして飛びついたら鷲掴みされてしまった、折角のオシャレが〜


「……私服、そんな感じなんだな」

「え?ああ、うん」

「……似合ってる、可愛い」

「…どうしたの?熱でもあるの?」

「どういう意味だ、ああ?」

「ゴメンナサイ!」


やめてよ、イケメンに褒められるの苦手なんだから…。うわー私、今絶対顔赤いわ…。


「行くぞ」

「どこに?」

「…遊園地、1DAYパス貰ったから。」


そう言ってポケットから2枚チケットを出すにじむー。まじか、まじなのか…。遊園地…!嬉しい、


「遊園地!わーい!遊園地遊園地!」

「…好きなのかよ」

「うん!絶叫系制覇ね!」

「お、この遊園地は絶叫系ばっかだからなー」

「本当に?!」


絶叫系は大好きだ、叫んで叫んで叫んでストレス発散して、楽しむぞー!おー!

というわけでデートなんだからと手を繋いで遊園地へと足を運び、絶叫系を制覇したり、日本一怖いというお化け屋敷にも入った。


「…夢に出てきそう…」

「おまっ、ビビりすぎっ…!」

「うるさいな!怖かったよコレ!にじむーが耐性ありすぎなの!」

「ぶ、ははは!ビビって抱きついてきたもんな…!」

「笑すぎだって!」

「悪いっ…ぶは、あー可愛い可愛い」


ドクン


綺麗に笑って頭を撫でてくれるにじむーはいつもの倍はかっこいいし、普段は私のこと可愛いなんて言わないから、調子狂う…。


「えりな…?」

「っ、何?」

「お前、足…」

「足…?…っひ…⁈」


新しい靴をはいたからだろう。
かかとの皮がズリ剥けて血が出ていた。怖くて痛みなんて感じてなかったけど、気付いたらめっちゃ痛い…何これ…


「…馬鹿!」

「っ…!」

「…あーもー…行くぞ」

「きゃ…!」


歩かせられないからとヒョイっと軽々と持ち上げればそのまま観覧車に乗り込んだ。リア充死ねって言った奴聞こえてるからな!

にじむーは眉間にしわを寄せたまま、私を席に座らせて自分はしゃがみ、靴を脱がせた。


「あーあ…」

「っ…」

「我慢しろよ…」

「いっ…た…や、め…」

「我慢しろって」


ズリ剥けている私のかかとの皮をにじむーはあろうことか全部取ってしまおうと引っ張ってくる。痛い…本当に痛い。


「ほ、んとに…やめ…てぇ…」


涙目になって、手でにじむーの頭を押すと、にじむーは手を止めて短い溜息をついた。

ホッと溜息をついたのも束の間


チュ…


不意に唇に暖かいものが当たったまま、離れなかった。

ああ、キスされてる…。


「ん、取れた」

「え…?」


暫らくすると唇は離れて行って、その代わりにとにじむーは取れたかかとの皮を見せつけた。

気をそらした内に取ったのか…!

そこからは早かった、血を拭き取って絆創膏を貼り、いつも持ち歩いてるらしいテープでぐるぐるにして剥がれないようにしてくれた。


「出来た」

「あ、ありがと…」

「今のキス、罰ゲームのキスな」

「…あ」

「本当は、ちゃんとしたかったけど」

「……しようよ」

「は?」


自分でも何を言ってるのかわからなかった。ただ、さっきのキスがあまりにも暖かかったからかもしれない。

もう1度したい、と思った


「もう1回…ちゃんとしよ」

「何言って…あんだけ嫌がってただろうが」

「あれは、人前だったから…」

「いいんだな?」

「…うん」

「……悪い女」


本当だよ、私って悪い女。
付き合ってもない異性と2回もキスするなんて…

私が座ってる席に右膝を乗せ、右手は優しく私の頬を撫でている。左手は窓に手をついていて、こんな格好、イケメンだから許されるんだよ、なんて。

近づく唇、

そしてまたくっ付いた──





虹色とデート
(このデートの後、私がにじむーに懐き始めたのは言うまでもない)

虹村寄りフラグ

りおなさんリクエストありがとうございました!満足していただけたら嬉しいです。これからもよろしくお願いします!


愛菜

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