Mr.Wonder

□66
1ページ/1ページ





「え?にじむーがいない?」

「はい…どこにいらっしゃるんですかね…」


3軍の後輩が1軍マネージャーである私ににじむーはどこにいるのかと聞かれて驚いた。にじむーならいつも1軍のみんなを指導するために絶対体育館内にいるのに。

いないなんて…もしかして…。主将を辞めるって言いに行ってるの?


「……にじむーに何の用?伝言なら伝えておくよ」

「あ……その…恥ずかしながら」


もじもじとしながら男の子は「中々上手くならない俺をいつも指導して下さっていて、今日は…この間教えてもらった基礎が出来てるか見てもらう日なんです」と教えてくれた。

知らなかった、にじむーがこんなことまでしているなんて…そんなの全然知らなかった。この子3軍だよ?1軍のにじむーが3軍を指導?


「そ、なんだ…」

「3軍の人は多分全員虹村主将の指導受けてますよ!凄く面倒見のいい方で教え方も上手ですし、みんなの憧れです!」

「へ、へぇ」


上手く息が出来ない。

全員を…指導?みんなの…憧れ…?

────やっぱり、主将はこの人しかいない


「…ありがとう!すぐ呼んでくる!!」

「え?!夢咲先輩…!」


にじむーがいると思う場所まで走る。

話が変わるから止められないのはわかってる。でも、この事実を知ってもらいたいの。

にじむーが主将のおかげでどれだけの人が救われてるのか、


「にじむー!!」

「えりな…?」

「えりな……」


予想していた場所ににじむーはいたけれど、征ちゃんもいた。ということは、もう…「赤司を主将にしてくれ」と申し出た後なんだろう。

…………、涙が出そうになった。


「……征ちゃん」


それを押し殺して


「赤司副主将、虹村主将との話が終わったならこの場を離れて、虹村主将と話があるの」


私はそう言った。

虹村主将、そう言う言い方に心底驚いたらしいにじむーと征ちゃんは目を丸くさせていた。


「…お願い」


もう1度口を開くと征ちゃんは「わかった」と小さい声で言って体育館の方へと戻って行った。


「…虹村主将」

「……えりな…」

「……ごめん、」

「あん?」

「…私に、止める資格ないなんて知ってる。…けど、私は……認めたくない。」

「……」


私の中では虹村修造が主将だし、私が思い描く主将ってのも虹村修造。

……嫌だ、認めたくない

───止められない

嫌だ、にじむーが主将じゃないと

───征ちゃんが主将になるの

駄目なの、修造が主将じゃないと

───原作通りに進める

修造が主将で居て欲しい

───征ちゃんが主将

こんなに素敵な主将は他にいない

───認めなさい

認めたくない…!!


「っ…えりな…」


気付いたら泣いていた


「…初めてだったの、」

「……」

「初めて、ああこの人が主将なんだって、思わせてくれた…」

「…俺が…?」

「そう…。修造が考えてる事が正しいのかは、私にはわからない。」

「…」

「私が望んでいる事と修造が願っている事がきっと違うから」

「…オメーさ…」

「…?」


ポンっと温かくて大きい手を私の頭の上に乗せる。


「言いたいこと言えって。何我慢してんだよ、俺はオメーより年下かもしんねぇけど…好きな奴の想いを受け止められねぇ程弱くねぇつもりだ。」

「…しゅ、ぞ…」

「それとも何か?俺には言えねーってか?あ?」

「っ…」


ふるふると首を横に振る。

違うの、そうじゃない。

言っちゃいけないって我慢してただけ。


「おら、言ってみろ。全部受け止めてやっから」


何て言って抱きしめてくれるからもう、止まらない。


「何でっ…なんでなの!私は修造が主将じゃないと嫌なのっ…!!ショーゴくんがいて修造が主将のバスケ部が大好きなのに…!なのにっ…!!どうして?!なんで?!可笑しいよ!!修造は主将としてみんなから慕われてるのに…!!!」

「ん…」

「みんなと笑っていたいの…!!!私がそうしなきゃいけないのに!こんなことで泣いてちゃいけないのに…!」

「そんな背追い込むな……」

「嫌だっ…嫌だぁああ…っ!!」

「っ…うん」

「辞めちゃ、やだ…よっ…!!」

「ごめん…っ」

「辞めないでよぉ…!!」

「ご、めんな…」

「ぅ、ぁああ……っ…!!」






私色の崩壊
(私は思ってる程、強くない)
次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ