Mr.Wonder
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「え?にじむーがいない?」
「はい…どこにいらっしゃるんですかね…」
3軍の後輩が1軍マネージャーである私ににじむーはどこにいるのかと聞かれて驚いた。にじむーならいつも1軍のみんなを指導するために絶対体育館内にいるのに。
いないなんて…もしかして…。主将を辞めるって言いに行ってるの?
「……にじむーに何の用?伝言なら伝えておくよ」
「あ……その…恥ずかしながら」
もじもじとしながら男の子は「中々上手くならない俺をいつも指導して下さっていて、今日は…この間教えてもらった基礎が出来てるか見てもらう日なんです」と教えてくれた。
知らなかった、にじむーがこんなことまでしているなんて…そんなの全然知らなかった。この子3軍だよ?1軍のにじむーが3軍を指導?
「そ、なんだ…」
「3軍の人は多分全員虹村主将の指導受けてますよ!凄く面倒見のいい方で教え方も上手ですし、みんなの憧れです!」
「へ、へぇ」
上手く息が出来ない。
全員を…指導?みんなの…憧れ…?
────やっぱり、主将はこの人しかいない
「…ありがとう!すぐ呼んでくる!!」
「え?!夢咲先輩…!」
にじむーがいると思う場所まで走る。
話が変わるから止められないのはわかってる。でも、この事実を知ってもらいたいの。
にじむーが主将のおかげでどれだけの人が救われてるのか、
「にじむー!!」
「えりな…?」
「えりな……」
予想していた場所ににじむーはいたけれど、征ちゃんもいた。ということは、もう…「赤司を主将にしてくれ」と申し出た後なんだろう。
…………、涙が出そうになった。
「……征ちゃん」
それを押し殺して
「赤司副主将、虹村主将との話が終わったならこの場を離れて、虹村主将と話があるの」
私はそう言った。
虹村主将、そう言う言い方に心底驚いたらしいにじむーと征ちゃんは目を丸くさせていた。
「…お願い」
もう1度口を開くと征ちゃんは「わかった」と小さい声で言って体育館の方へと戻って行った。
「…虹村主将」
「……えりな…」
「……ごめん、」
「あん?」
「…私に、止める資格ないなんて知ってる。…けど、私は……認めたくない。」
「……」
私の中では虹村修造が主将だし、私が思い描く主将ってのも虹村修造。
……嫌だ、認めたくない
───止められない
嫌だ、にじむーが主将じゃないと
───征ちゃんが主将になるの
駄目なの、修造が主将じゃないと
───原作通りに進める
修造が主将で居て欲しい
───征ちゃんが主将
こんなに素敵な主将は他にいない
───認めなさい
認めたくない…!!
「っ…えりな…」
気付いたら泣いていた
「…初めてだったの、」
「……」
「初めて、ああこの人が主将なんだって、思わせてくれた…」
「…俺が…?」
「そう…。修造が考えてる事が正しいのかは、私にはわからない。」
「…」
「私が望んでいる事と修造が願っている事がきっと違うから」
「…オメーさ…」
「…?」
ポンっと温かくて大きい手を私の頭の上に乗せる。
「言いたいこと言えって。何我慢してんだよ、俺はオメーより年下かもしんねぇけど…好きな奴の想いを受け止められねぇ程弱くねぇつもりだ。」
「…しゅ、ぞ…」
「それとも何か?俺には言えねーってか?あ?」
「っ…」
ふるふると首を横に振る。
違うの、そうじゃない。
言っちゃいけないって我慢してただけ。
「おら、言ってみろ。全部受け止めてやっから」
何て言って抱きしめてくれるからもう、止まらない。
「何でっ…なんでなの!私は修造が主将じゃないと嫌なのっ…!!ショーゴくんがいて修造が主将のバスケ部が大好きなのに…!なのにっ…!!どうして?!なんで?!可笑しいよ!!修造は主将としてみんなから慕われてるのに…!!!」
「ん…」
「みんなと笑っていたいの…!!!私がそうしなきゃいけないのに!こんなことで泣いてちゃいけないのに…!」
「そんな背追い込むな……」
「嫌だっ…嫌だぁああ…っ!!」
「っ…うん」
「辞めちゃ、やだ…よっ…!!」
「ごめん…っ」
「辞めないでよぉ…!!」
「ご、めんな…」
「ぅ、ぁああ……っ…!!」
私色の崩壊
(私は思ってる程、強くない)