中編
□ぽろり
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「さくら」
土方さんが来てくれた。
最後に会ったのは5日前。最近はこんなに頻繁に来てくれることなんてなかったのに。
3年目、冬
『やっほー、土方さん。珍しいね。』
「あぁ。・・・仕事蹴ってきた。」
『あの仕事バカの土方さんが?信じられない!熱でもあるんじゃないの?』
座っていた枝からふわりと降りる。
根元に腰かけた土方さんの横に並んで座った。
「さくら、実は・・・」
『ねぇ、土方さん』
分かってるよ、土方さんが仕事ほったらかしてまでここに来てくれた事の意味は。
『今日は何のお話聞かせてくれるの?』
分かってるから、最後は笑ってお別れしよう。
そんな悲しそうな顔しないで。
『あ、いっつも土方さんに喋らしてるからなぁ。
今日はお姉さんがお話してあげよう。』
「さくら、」
『えーとね、なに話そうかな。』
「さくら、」
『やっぱり私の武勇伝とか?』
「さくら」
『もう!なに?土方さん。』
「泣くな・・・」
桜、ぽろり
(泣いてなんか、ないんだから)
(貴方はもう、ここには来ない)
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