永久に約束
□っ
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「ははっ、自分でそう仕向けたのに阿呆みたいだよな、俺」
自嘲の笑みを洩らすと頬が冷たくなって。
プライドの高い俺はそれが何か認めたくなくて。
「五月、」
最初からフィフスセクターに逆らっていればこんな思いしなくてすんだのか。
最初から自分の気持ちに素直になっていればこんなことには。
「好きなんだ……」
好きだけど好きだから君を突き放す。
だってほら。今日だって最初は南沢さんと2人で幸せそうだったじゃないか。
南沢さんも五月が好きだし仲良くやればいい。
そんなことを思っているといきなりポケットが震えた。
『着信 五月』
五月……。
電源ボタンに指を滑らせた。
「今は話せるような状況じゃないんだ」
目の前に広がるビル群の屋上。
俺の後ろはフェンスがあって。
それくらいで自殺かと馬鹿じゃないかと思うだろ。俺は誓ったんだ。五月を守れないくらいなら、五月に嫌われるくらいなら死ぬって。
今まではいくら突き放しても付きまとって来ていたから安心していたのに。
「ごめんな、神童、雷門のみんな」
そして、
ヴーッヴーッ……
「……最後のメールだ、見てやるか」
『メール 五月』
五月……約束守れなくてごめんな。
『約束破って死のうとしてないでしょうね!? だとしたら大きな勘違いだからね! 蘭のこと嫌いじゃないから! 蘭が私のこと嫌いでも、』
「私は蘭が好きなんだから! 阿呆!」
ちょうど良いタイミングで五月が叫びながら入って来た。
「五月……」
「馬鹿。1人で死なないでよ」
私が居るから! と泣きじゃくる五月の肩を抱き締める資格は俺にはない。
「私は、蘭の隣りに居る資格なんて、人を好きになる資格なんて要らないと思うの!」
五月はエスパーかとたまに思う。
恋愛とかには疎いくせに。
「蘭のことならなんでもわかる! ずっと一緒に居たから!」
五月……。
好きだ……っ!
そんな気持ちが一滴追加されて溢れたら止まらなくて、フェンスを飛び越えて五月に飛び付いた。
この気持ちを伝えるために。