笑顔=自分≠友達

□弐拾漆:灰色の
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「っ……」

 フィールドに入れば、
 大きな歓声、は無く。
 目が眩む空、も無く。

「ゴッド……」

ピピーッ

 前半終了の合図とともに入来院の嗚咽が聞こえる。
 入来院が、泣いて目をそらしていた。
 嗚呼、彼女は本気で泣いている。
 妙に冷めた頭でそんなことを考えていた。

「駄目……目をそらしちゃ、駄目よ!!」
「皆が必死に戦ってるのに、私たちだけ目をそらすなんて……」
「入来院さん、しっかり見なさい!!」
「嫌だよぉっ……!!!!!!」
「〜っ!!」

 あんの、やろう。

「入来院んんんんんんんんんんん!!!!!!!!!!!!」
「「「!!??」」」


あんた、雷門のマネージャーでしょ!?
 チームが傷ついているのに目をそらすの!? あんた以外のマネージャーを見てみなよ!!
 現実から目を背けないで必死に一緒の時を耐えているのにあんただけ逃げるの?
 只の弱虫じゃん!
 何が“仲間”よ! 何が“王子様”よ!
 あんたが皆のことを何と思ってても私には関係ない。けどね! 思うんだったら自分もそれ相応のことをしなさい!
 “仲間”なら一緒に戦いなさい! 一緒に戦うっていうのは身体的な面だけじゃないの!
 “姫”なら最後まで見届けなさい! 王子の雄姿を、その眼に焼き付けなさい!!


 一息でしゃべって入来院の所につかつかと歩み寄る。
ぱしん
 私は初めて入来院に手をあげた。

「!!?? 翔嵐さんが、私に手をあげた……?」
「そうだよ、入来院。私は、自分自身をいくら傷つけられてもいい。だけど、」
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